このシリーズでは、あつみかぶ、田川かぶと、鶴岡市南部の山間地域に伝承されてきた庄内を代表する赤カブを紹介してきた。今回は、大根のように細長く、上の部分が赤紫色の藤沢かぶを取り上げる。
「くせがないから、漬物に限らずいろんな料理に使えると思いますよ。8月の天候不順で、いつ山焼きができるか心配しましたが、種をまいてからは順調でした」。鶴岡市の産直館などで藤沢かぶを販売している伊藤よすみさん=藤沢=が安堵の表情を浮かべた。
藤沢かぶは、湯田川温泉に隣接する藤沢地区で受け継がれてきた在来野菜。あつみかぶ、田川かぶと同じように、山の斜面の焼き畑で栽培される。作り手が減り、20年ほど前に消滅の危機を迎えたが、種を守り続けた地区の女性とその後継者の努力で、現在は地区の特産に成長した。
藤沢かぶの特徴について伊藤さんは「歯応えの良さと独特のサキサキ感です」と表現する。赤カブの場合も、転作田と焼き畑では歯応えが違う。藤沢かぶもやはり、歯触りが持ち味のようだ。生のカブを見せてもらうと、鮮やかな赤紫色の部分に目がいった。「地表に出ている所が赤紫で、地面の下が白なんです」と教えてくれた。2色の対比がおもしろい。
自家製の甘酢漬けをごちそうになった。あつみかぶと同じように元の色が落ちて、カブ全体が薄い赤色に染まっている。口に入れると伊藤さんが言うように「サキサキ」している。あつみかぶや田川かぶの「しゃきり」とは微妙に食感が違う。赤カブ特有の辛みがいい。
田川かぶを取材した際、火を通す料理も面白いと知った。藤沢かぶはどうなのだろう?疑問を口にしようとしたら、「野菜とのいためもの、素揚げや天ぷらもいいですよ。チャーハンに入れてもおいしいです」とにっこり。
生のカブをみそマヨネーズで食べてみたが、新鮮だけにとてもおいしい。スティックサラダの感覚で食べるのがいいようだ。おもしろいと思ったのが、「大根のようにすり下ろしてください。紅葉おろしのような色になります。ナメコや天ぷらのつゆにどうぞ」という使い方だ。
帰宅後、藤沢かぶと、最近、注目を集めている野菜のマコモタケをベーコンと一緒に塩コショウでいためてみた。カブの辛みが消えて、甘みが出てきた。田川かぶと同じようにけんちんもおいしそうだ。今度はおすすめレシピの漬物にもチャレンジしてみたい。
伊藤さんの藤沢かぶは250グラム入りが150円、500グラム入りが280円。鶴岡市の産直館のぞみ店=電0235(35)1477=、駅前店=同(22)0202=、白山店=同(25)6665=のほか、同市日枝の産直こまぎ=同(35)0660=で販売している。
藤沢かぶ10キロ、塩167グラム、砂糖1・3キロ、酢4合、焼酎0・6合
2009年10月17日付紙面掲載