素材を探しに鶴岡市の百万石の里「しゃきっと」をのぞくと「たかな」という野菜が目に飛び込んできた。高菜漬けという漬物は食べたことがあるが、それに使う野菜だろうか。疑問を口にすると、「さっとゆでて辛味を味わうの。わたしは大好き。おいしい野菜ですよ。火が通り過ぎると辛くなくなります」。佐藤清子店長の推薦で上林清井さん=鶴岡市馬町=を訪ねた。
「生のまま漬けても辛くありませんが、お湯を通すと辛味が出ます。温度は70~80度が目安です。昔は甘酢漬けにしていましたが、若い人はしょうゆ漬けや三杯酢などであえるのがいいようです」。上林さんが辛味を生かした料理法を話してくれた。
畑に連れて行ってもらったが、事前に調べた「高菜」とは感じが違う。写真で見た「高菜」は、小松菜などと同じように葉が大きくて広いのに、上林さんのたかなは葉がギザギザだ。「折り菜のように、こんな感じでかいていきます」。上林さんが手で摘み取っていく。アイダケの茎の色を緑にしたような野菜と表現すればイメージしてもらえるだろうか。
「わたしが嫁いできたときには馬町の多くの農家が栽培していました。年配の人に種をもらってわたしも始めたんです。今は栽培者も少なくなり、しゃきっとに出しているのは3人だけです」。馬町に伝わる在来野菜という「予感」がした。
料理法はさっと湯にくぐすほかに、普通の野菜のようにゆでる場合もあるそうだ。「ごまあえやおひたしもおいしいですよ。春野菜として食べてみてください。辛味を味わいたいなら、お湯の温度と通す時間がポイントです。うまくいくように願っています」とエールを送ってもらった。
帰宅後、たかなをさっとお湯にくぐらせ、だしじょうゆで味わった。子供たちは辛味を敬遠したが、菜の花などのからしあえが好きな人にはこたえられないおいしさだと思った。普通の野菜と同じようにゆでてマヨネーズで食べる。まさに「春の味」だ。冬を越して最初に出てくる露地物の葉野菜として、地域で重宝されていたのではないかと想像を膨らませた。
在来野菜を研究している山形大農学部の江頭宏昌准教授にたかなの写真を見てもらったところ、一般の高菜とはやはり違うようだ。新たな在来野菜として注目されるかもしれない。上林さんのたかなは200グラムで1束100円。5月中旬まで鶴岡市覚岸寺のしゃきっと=電0235(29)9963=で販売している。
たかな、しょうゆ、酒各適量
2010年5月3日付紙面掲載