素材探しに鶴岡市の産直あさひ・グーをのぞいていてセロリを見つけた。「大網はセロリで有名な地区。今日出ているのが今年の初物です。ぜひ紹介して」と支配人の「推薦」を取り付け、渡部順子さん=大網=を訪ねた。
「セロリの栽培はおばあちゃんが担当しています。一緒に話を聞いてください」。順子さんと義母のみゑさんの2人にセロリの説明をしてもらうことになった。
「大網は豪雪地だからハウス栽培だろう」。取材前はこんな先入観を持っていたが、「いえ、露地物です」と言われびっくり。「セロリは高原野菜だから、大網の土壌によく合うのだと思います」と順子さんが解説する。大網産の大根もおいしい。昨年、このコーナーで「大網大根」を取り上げ、そのおいしさに感動した記憶がよみがえった。
「地区全体でセロリを始めて十数年になりますが、今は自家用に作っている程度。グーに出しているのも地区ではうちだけです」とみゑさんが語る。佐藤支配人の「大網は有名」という言葉を実感した。
自宅そばの畑から観光名所でもある大日坊が見える。緑色のセロリの周囲に新聞紙が巻いてある。「茎の部分を軟らかくするのと、色が薄くなるように新聞で包んでいるんです」。みゑさんが理由を解説する。それでも、渡部家のセロリは、スーパーで見掛けるものより緑色がかなり濃い。茎もたくましい。「野趣あふれる」とでも表現したくなるような力強さ、生命力を感じさせる。
食べ方はサラダなど生食中心と思っていたら「葉っぱは天ぷらがおいしい。茎の表面の皮というか、繊維を取ってから料理します。からし漬けやかす漬けなど漬物、イカやソーセージとのいため物もいいです。塩コショウで味付けします。つくだ煮もおすすめです」とみゑさんが調理法を教えてくれた。「根っこの部分は生でみそを付けて食べるといい。セロリは捨てるところがないのです」と続けた。
順子さんは「生でスティックにして、筋を引きながらみそ、マヨネーズで食べるのがおいしい。20年ほど前、主人と子どもたちがお菓子のポッキーのように食べていました。わたしもやってみて、セロリってこんなにおいしいのかと感動しました」と思い出を語る。そして「塩水にさらしてから庄内柿とあえるととても相性がいいです。庄内柿があるうちに紙面に載せてください」と笑った。
セロリと庄内柿は晩秋の「出合い物」なのかもしれない。わが家ではスープや煮込み料理にも使う。ビタミンCやカロテン、鉄分、マグネシウムなどを豊富に含み、繊維質もたっぷりの野菜だからたくさん食べたい。
「香気が強いので、香りが苦手という人は買っていきません。好きな人はリピーターになります」とは順子さん。鼻を近づけると、市販のセロリよりも香りが強い。「香気好き」にはこたえられない野菜だろう。
みゑさんのアドバイスに従って葉っぱを天ぷらにしてみる。形は青ジソの葉に似ているが、味は洋風の山菜のような感じだ。個人的には塩や抹茶塩が合うと思った。だが、子どもは強い香気を敬遠した。ソーセージといためると、しゃきしゃきした食感と香気が肉類とマッチしておいしい。新しい食べ方を教わり、これからセロリを買う回数が増えそうだ。庄内柿の甘味とセロリの香気の組み合わせにも驚かされた。
渡部さんのセロリは3本入って150円。鶴岡市下名川の産直あさひ・グー=電0235(58)1455=で「雪が積もるまで」販売している。
セロリ(茎)、脱渋した庄内柿、マヨネーズ
砂糖少々、塩少々を入れると味が引き立つ。分量を見ながら入れる。
2010年11月20日付紙面掲載