夏の暑さを乗り切るためにはニンニク料理が欠かせない。そんな家庭も多いだろう。「でも国産のニンニクは高くて」という人は、酒田市飛鳥の農産物直売所「めんたま畑」に行ってみるといい。上質のニンニクが低価格で買えるのだから。
昭和50年代後半、旧平田町がニンニクの特産化に乗り出した。作付けの中心となったのが砂越地区だった。地区の西側で団地化が図られ、富樫ミヨコさんも栽培に取り組んだ。その後、ほ場整備が行われ、「ニンニク団地」はなくなり、生産者も減少した。
「今は砂越で3、4人、旧平田町内でも10人ぐらいしかいなくなりました。高齢化が進んだこともありますが、ニンニクの種子が高価なのも理由かもしれません」。そう話す富樫さんは少し寂しげだ。
富樫さんは今、自宅近くの10アールほどの転作田で栽培している。10月下旬に種をまくと、雪が降る前に葉が出る。そのまま冬を越し、春になったら追肥する。時期を誤ると「割れてしまう」という。5月末から6月初めにかけて成長し、6月中旬から下旬にかけて収穫期を迎える。
トラクターに据え付けた機械で葉を裁断、その後で食用となる球根部分をトラクターで掘り起こす。収穫したニンニクは小屋に運び、14kg分をネットに入れて温風を当て、10kgぐらいになったところで出荷する。「生出し」のニンニクは日持ちしないため、このような処理を施す。
ニンニクには、ビタミン、ミネラル、アリシン、スコルジニンという成分が含まれている。スコルジニンは体内の栄養素を燃焼させ、エネルギーに変え、疲労防止に効果があるビタミンの働きを高める。「パワーを生む野菜」たるゆえんだ。
「私はこれを作り置きしておくの」。富樫さんがおもむろに瓶を開けた。促され手のひらを上向きにしたら、ころりとオレンジ色の粒が転がり落ちてきた。腹痛時に飲む錠剤を二回りほど大きくしたようなサイズ。「ニンニク玉です。うちでは家族が毎日飲んでいるので、ほとんど風邪を引きません」と富樫さんが胸を張った。
お茶と一緒に飲んでみた。特に味はしないが、体の底からパワーがみなぎってくるような感じがする。ニンニク玉は、ふかしたニンニクをミキサーですりつぶし、卵黄を入れて煮詰め、棒状にして乾燥させ丸める。完成までには大変な手間がかかる。「めんどうくさいので、冬の仕事にしているの」と笑った。
富樫家ではすりおろしたニンニクをパック詰めにして冷蔵、冷凍保存しておく。「カレー、シチュー、肉いため、ギョーザなどに使います。便利ですよ」。
富樫さんが代表を務める4人の生産者で組織する平田手づくり倶楽部は、ニンニクを原料にした焼き肉のたれも製造、めんたま畑やスーパーで販売している。しょうゆ、みそ、はちみつなどが入り、うまみ調味料は使わないやさしい「母の味」だ。「焼き肉のほか野菜いため、みそラーメン、湯豆腐にもいいですよ」とにっこり。
富樫さんのおすすめレシピはニンニクのかつおみそ漬け。「ご飯に乗せてもおいしいです」。健康家族のパワーの源だ。
「毎日食べるものでないのによく売れる」という富樫さんのニンニク。めんたま畑では10月ごろまで販売している。
ニンニク1kg、みそ400g、花かつお適量、焼酎少々、砂糖100g、水飴少々
2006年7月22日付紙面掲載