「中国野菜」が最近、庄内でも数多く栽培されている。このシリーズでもツルムラサキやモロヘイヤなどを取り上げてきた。「すいおう」もその1つかと思ったら、「九州沖縄農業研究センターが育成した茎と葉を食べるサツマイモで翠王と書きます。ポリフェノールやカルシウム、カロテンなどがほかの緑黄色野菜よりも豊富に含まれています」と鶴岡市藤島庁舎産業課の深澤昭吾エコタウン推進員が教えてくれた。
安全、安心な生産地を掲げ、旧藤島町が取り組んでいたエコタウンプロジェクト。その中で「ほかの地域にはない機能性の高い野菜」として着目したのがすいおうだった。
昨年は2戸の農家がハウスで栽培し、国道345号沿いの産直施設「四季の里・楽々(らら)」でも販売された。今年は6戸が手がけている。
「これがすいおうです。45本の苗を植えたんですが、今ではハウスがふさがるほどに成長しました。生命力旺盛な野菜です」。楽々に出荷している阿部正志さんのハウスに、すいおうが緑色のじゅうたんのように広がっていた。
「昔からこの辺ではサツマイモの茎を収穫前に食べていたものです。すいおうを始めてからまた食べるようになりました」と阿部さんが笑う。
5月に定植し、6月下旬に収穫が始まった。「次々につるが出てくるので倍々ゲームですよ。すさまじい」。阿部さんから出てくる言葉は成長力に対する驚きが多い。
阿部さんが茎を摘み取っていくと、切り口から白い「樹液」があふれ出した。さわってみると、ボンドのような粘りけがある。「朝に付いたのが取れないんですよ」。阿部さんの手のひらが黒い。これもすいおうが持つ生命力なのだろうか。
気になる味の方は「苦みやくせがなく、甘みがあります」と深澤推進員が解説し、調理法は「葉は焼きおにぎりに使うとおいしい。庄内では弁慶おにぎりは以前、タイサイで巻いていましたが、タイサイにはすじがある。すいおうならそれが解消されます」とすすめてくれた。
エコタウン推進班の阿部知弘係長は「葉は天ぷらもいいです。『食の都』庄内親善大使で楽々の料理塾の講師でもある奥田政行シェフもすいおうを購入し、レストランのパスタに使ってくれています」と胸を張った。
生産者である阿部さんは「わが家では茎を薄揚げと煮物にしますが、若い人はベーコンとタマネギといためたのがおいしいと言います」と教えてくれた。
帰宅後、すいおうをベーコンとタマネギといためてみた。しゃきしゃきとした食感がおいしい。根元は硬いので、1度ゆでてからいためた方がよさそうに思えた。葉の天ぷらは、そうめんの味を引き立てる。翌朝、大きめの葉を、塩を入れた熱湯にさらし、水気を切って弁慶おにぎりにしたら、家族間で取り合いになった。
今回のおすすめレシピは昨年から栽培している成澤久子さんのすいおうの煮物。次回はこちらにも挑戦してみたい。すいおうは楽々で200g90円で10月末ごろまで販売している。
すいおうの葉と茎200g、生シイタケ小2個、油揚げ(薄揚げ)1枚、A(みりん大さじ1、しょうゆ小さじ2、塩小さじ1、砂糖少々)
メモ…好みでこんにゃく、ちくわなどを加えてもよい
2006年8月26日付紙面掲載