今回のテーマは糸カボチャ。このコーナーで取り上げる野菜について、取材前に「予習」していくのだが、今回はインターネットで検索してもなかなかヒットしなかった。普通のカボチャだろうと思って、予備知識がないまま三川町の産直みかわに出荷している加藤昌嗣さん=押切新田=の自宅を訪れてびっくりした。
「糸カボチャは、そうめんカボチャとも言います。ほぐすとそうめんのようになるからでしょう」。加藤さんにこう言われてもピンとこない。「カボチャを割ると細い糸状の部分も含まれているのだろうか」と想像していると、母親の喜美子さんが「まず現物を見て」とお盆に載せた料理を運んできた。
出てきたのは糸カボチャの酢の物といため物。一見、春雨料理のようだ。「食べてみてください」と喜美子さんにすすめられ、はしを取った。しゃきしゃきとした歯ごたえ、調味料の味がよくしみている。春雨、そうめん、大根のつまが頭に浮かんだが、そのいずれとも食感が違う。カボチャのイメージとかけ離れた料理を食し、思わず笑いがこみ上げてきた。
「これが本当にカボチャですか」。疑問を口にすると、今度は収穫した状態と輪切り、ゆでたものと、3種の糸カボチャがテーブルに並べられた。
「もこもことした形のカボチャと違ってラグビーボールみたいでしょう」。昌嗣さんが笑った。レモンをやや薄くしたような黄色。輪切りにすると、黄色みがかった夕顔のような感じがする。ゆでた糸カボチャは金色に近い。「フカヒレみたいですね」と感想を述べたら、喜美子さんが「言われてみれば」とうなずいた。糸カボチャは金糸瓜(きんしうり)とも呼ばれるそうだ。
「3cm幅の輪切りにし、10分ほどゆでて冷たい水に入れると繊維がほぐれ、そうめん状になります。それを料理するんです」。昌嗣さんが下ごしらえを教えてくれた。
「さっぱりしていてくせがないので、そうめんや酢の物、サラダなど、暑いときに冷やして食べるのがおいしいです。私はそうめんに混ぜたり、冷や奴と一緒にしてかき込みます」と昌嗣さん。夏に紹介すべきだった、読者に申し訳ないことをしたと悔やんだ。
喜美子さんのおすすめレシピでもある糸カボチャのいため物は、ぴりっと辛くておいしい。ご飯にも酒のお供にも合いそうだ。
4月に種をまき、5月に定植、7月に入ると収穫できる。「取ってすぐより、ある程度置いてからの方がおいしい。蔵で保存しています。冬まで大丈夫ですが、あまり残っていなくて」と昌嗣さんが申し訳なそうに話す。
「珍しいものなので作る方も楽しい。食べる人も食卓のアクセントになると思います」と昌嗣さんが話す糸カボチャ。低カロリーでダイエットにもよさそうだ。産直みかわで1個250~300円で販売している。売り切れ御免の限定品だ。
糸カボチャ400g、ニンジン少々、シイタケ5枚、赤トウガラシ少々、白ごま少々、サラダ油大さじ2、酒大さじ2、砂糖大さじ2、しょうゆ大さじ2~3、だし汁大さじ2、ネギ少々
2006年9月16日付紙面掲載