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「カラトリイモ」ひと手間で変身の伝統食

「朝、皮をむいたら手が真っ黒になってしまった。石けんで洗っても取れませんでした」。鶴岡市のJAグリーン鶴岡店産直館と産直館駅前店でカラトリイモを販売している安達美枝さん=茅原町=が苦笑いしながら右手を見せてくれた。消費者がすぐに使えるようにと、カラトリイモの茎の皮をむいてから出荷しているためだ。

カラトリイモは、全国的にはズイキイモが通り名だが、庄内ではカラドリやズギイモなどと呼ぶ。鶴岡・田川では茎が赤く、酒田・飽海では緑色。赤茎、青茎と言われるが、味は変わらないとされる。安達さんの手に付いた赤い色素は下処理をした「勲章」でもある。

「昔は農家ならどこの家でも苗代に植えていた」と話すように、カラトリイモは庄内では秋から冬にかけて欠かせない食材だった。茎は生はもちろん、乾燥させたものは戻して納豆汁や雑煮に入れる。イモの部分も煮物やみそ汁にして食卓に上った。最近は、下処理の手間を嫌う若い層に敬遠されがちだが、なくすには余りに惜しい「伝統食」だ。

「直売所には皮をむいて出しているので、生の茎はお湯でゆでるだけ。酢を入れると色合いもよくなり、えぐみがなくなります」とコツを教えてくれた。

安達家ではゆでた茎を「ごまとクルミを入れた和え物」にすることが多い。和え物以外でも酢の物、おひたし、しょうゆをかけて食べるなど幅広く利用できる。乾燥させた茎は「戻してから、さつま揚げなどといためてけんちんにするとおいしいです」。

戻す時に火を入れるのか止めるのか、どちらがいいのかずっと疑問に思っていた。この機会にと聞いてみたら、「煮立ったお湯に入れて火を止め、中ぶた、そして上ぶたをして1、2時間置き、水で洗います」と明快な答えが返ってきた。

安達家ではイモの部分はコロッケや煮物にする。「食べてみてください」。おすすめレシピのコロッケをいただいた。ジャガイモに比べ粘りがある。切り口はやや紫色。中のひき肉にしょうゆがほどよくしみ、ソースなしでもおいしく、腹持ちもよい。甘みもあるので子どものおやつには最適。「孫たちもおばあちゃん、これおいしいよと言っています」。そばで聞いていたご主人の忠一さんも太鼓判を押す一品だ。

「今年は背も高く育ち、出来もいい」と安達さんが話すカラトリイモ

「私のもう一つのおすすめはあんかけ。蒸したイモにごまと砂糖を入れて茶巾でしぼる。粘りけがあるのであんかけが合います」と安達さん。続いておでんの「裏技」も伝授してくれた。「煮る前にイモをいためると味がよくしみるそうです。友人が教えてくれたので、私も今度やってみようと思っています」と笑った。

産直館と駅前店ではイモも茎も100円ぐらいから販売している。「イモはこれからがおいしくなる」そうだ。「カラトリはひと手間かければ変身します。ぜひ食べてみてください」。「おいしいね」と喜ぶお客さんの笑顔。それを楽しみに安達さんは安全な野菜を作り続けている。

安達さんのおすすめレシピ

カラトリイモのコロッケ

○材料

カラトリイモ2個(約600g)、ひき肉150g、砂糖大さじ5、しょうゆ大さじ2~3、塩適宜、かたくり粉少々、酒大さじ1、卵、パン粉

○作り方

  1. イモの皮をむき、8等分ぐらいに切り分けて蒸す。
  2. 蒸し上がったらすりこぎでつぶしてさまし、砂糖大さじ2と塩、かたくり粉をまぜる。
  3. ひき肉を砂糖大さじ3としょうゆ、酒を入れて、汁気がなくなるまでいためてさます。
  4. 「2」に「3」を入れて丸め、卵、パン粉の順にまぶしてカリッとするまで油で揚げる

2006年9月23日付紙面掲載

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