「松ケ岡ではサツマイモはもちろん、野菜など農作物はなんでもおいしい。庄内柿も本場です。それは土に力があるから。まさにこれですよ」。鶴岡市羽黒町松ケ岡の産直施設「朝どれ屋」にサツマイモを出荷している清野育さん=松ケ岡=はこう語り、このコーナーのタイトル「大地の恵み」を指さした。
明治維新後、旧庄内藩士たちの手により松ケ岡地区の開墾が行われた。以後、肥よくな土壌が生み出す農作物が高い評価を得てきた。
時代が平成に変わったころ、松ケ岡の6人の女性たちが自分たちの育てた野菜の直売に乗り出し、国指定史跡でもある松ケ岡開墾場の一角に店を開いた。これが朝どれ屋の前身で、土日限定で営業していた。
「うまい野菜だからみんなに分けたい。6人集まれば、6倍のパワーになると思って始めました。当時は農家の嫁は預金通帳を持っていなかった。自分たちの通帳を持つという意味合いもあったのです」と清野さんは振り返る。
松ケ岡のサツマイモ栽培の歴史は長く、1916(大正5)年の史料にも記述がある。「秋に収穫して冬を越し、翌年の6月まで食べられる」重宝な野菜でもあった。地区内にいくつか現存する戦前の防空壕で保存されてきた。
清野さんが作るサツマイモは、糖度が高い品種のベニアズマが大半だが、「紫芋」も栽培している。「鹿児島で買ってきて、試しに植えてみたら庄内でも大丈夫でした。チップスにするなら紫芋の方がおいしいと思います」と話す。
調理法について「なんと言っても焼き芋が一番。子どもは薄くスライスして油で揚げたチップスを喜んで食べます。ほかに大学イモや天ぷら、正月用に栗きんとん、あんかけにする人もいます。サツマイモはあんかけとの相性がいいようです」と教えてくれた。
清野さんのおすすめレシピはサツマイモとリンゴの煮物。「今の時期はリンゴがたくさんあるので作ってみました。甘さは好みで調節してください」。甘いサツマイモとリンゴの酸味、秋の「出合い物」が奏でるハーモニーが楽しい。「サツマイモは温かいうち、リンゴは冷めてからがおいしいと思います。友達が急に来た時にも簡単に作れます」。おやつはもちろん、料理にも合いそうだ。
「繊維質で体にもいい」というサツマイモ。ビタミンやミネラルを豊富に含んでいる。無農薬で栽培する清野さんのサツマイモは甘みも十分。1kg当たり250円、中ぐらいサイズが4、5個入っている。
サツマイモと同量のリンゴ、イモとリンゴの合計の10%の分量の砂糖、水か白ワイン
2006年9月30日付紙面掲載