個人的には「タケ」が付く食材は好きだ。ヒラタケやマイタケなどのキノコ類、孟宗(もうそう)や月山筍といったタケノコ。どれも大好物。しかし、今回取り上げるマコモタケは、名前は聞いたことがあったが見るのは初めて。どんな野菜だろうと楽しみにして待ち合わせ場所に向かった。
「野菜を食べないうちの子どもも肉と一緒にいためると、喜んで食べるんですよ」。鶴岡市藤島地域の「ぽっぽの湯農産物直売所」の運営組合代表でマコモタケを出荷している板垣吉徳さん=長沼=が胸を張った。
マコモタケはイネ科の多年草。中国や東南アジアでは広く料理に使われている。河原などに自生しているマコモの一種。庄内で「ガツギ」と呼ばれるマコモは根を食べるのに対し、マコモタケは太く成長する茎の部分が食用になる。
マコモタケの特産化に向けたプロジェクトは今年、本格的にスタートした。仕掛け人はぽっぽの湯の板垣久喜支配人だ。「稲作と同じスタイルで転作田を活用できる作物を求めていました。マコモタケはそれにぴったり当てはまるものだったのです」と話す。
先進地である長野県内の農協から2年前、2株を取り寄せた。それを昨年、試験栽培した後に株分けし、今年は200株に増やした。板垣さんともう1人の生産者が稲と同じほ場で育成している。
「田植え時期の春に株を植えた後は肥料を2回やり、収穫前に草取りをするだけ。手がかからないのも魅力です」と板垣さん。だが、「収穫期も稲と重なるので手が回らない。それをどうするかが課題です」と苦笑いした。
収穫したものを見せてもらった。リレーで使うバトンに似た形で色が白く、上の部分は黄緑色の皮に覆われていた。
「見た目を考え、皮を付けています。食べる時にはむいてください。タケノコとアスパラの中間ぐらいの軟らかさです。生で食べても味はありませんが、いため物にすると甘みが出ますよ」と板垣さんが話す。
料理法について聞くと、「個人的には天ぷらが一番と思いますが、塩コショウで味付けしたシンプルないため物もおいしい。油とか肉と相性がいいようです」。ほかにきんぴらや漬け物、ギョーザなどが板垣さんのおすすめ。
どんな味がするのだろうと想像していると、板垣支配人が「食べてみて」とかす漬けを出してくれた。酒かすがほどよくしみている。食感も「硬からず、軟らかすぎず」とちょうどいい。歯が弱いお年寄りでも大丈夫そうだ。「アルコールがほしくなるな」とつぶやくと「親せきに配ったら、つまみに合うと言われました」と板垣さんが白い歯を見せた。
「食物繊維、カリウムを含んでいるので便秘によく、血圧を下げる効果があると思います。ヘルシー食品ですね」。板垣支配人が栄養価について解説する。
冷蔵庫で1週間程度保存できる日持ちのよさも長所。ぽっぽの湯では1本60~100円で10月末ぐらいまで販売している。
マコモタケ3~4本、ニンニクとサラダ油適宜
2006年10月15日付紙面掲載