低カロリーで、コレステロールの抑制、高血圧予防効果があるなどの理由から最近、注目を集めているキノコがエリンギだ。「和洋中のどんな料理にも合いますよ」。鶴岡市白山のJAグリーン鶴岡店産直館にエリンギを出荷している太田裕徳さん=馬町=が胸を張った。
太田さんは、1984年に敷地内に建てた菌舎で10年余り、ヒラタケシメジの栽培を続けていたが、価格の低迷など将来性に疑問を持っていた。菌舎の施設の活用が可能な作物を探していて出会ったのがエリンギだった。
試験栽培を経て「これならいける」との手応えを感じ、6年ほど前にエリンギに切り替えた。「ところがどっこい、失敗の連続。最初は順調に成長するが、1カ月後ぐらいに枯れてしまう」。種菌、栽培技術が確立されていないこともあって当初は苦労を重ねたという。
エリンギはプラスチック製の瓶に、おがくずを入れた菌床で栽培される。種菌を植えるまでの下地を作る接種室、35~40日間菌を培養する培養室、温度と湿度を2段階に分けて管理する2つの芽出し室、収穫期まで育てる生育室の5つの部屋が使われる。平箱に入れて4度の引っ越しをするというから手間がかかる。
収穫できるまでに要する期間は2カ月。「天然のキノコなら1年かかる。施設栽培の場合は、温度、湿度などで四季折々を感じさせるわけです。外気の影響も受けるし、難しいですね」と話す。
自宅敷地内の菌舎を見学させてもらった。キノコ独特の香りが漂う各部屋は、ひんやりした冷気や湿気を感じさせる。生育室では収穫直前のエリンギが、瓶からつやのある顔を出していた。太い1、2本は農協への出荷用、その横に生えている小さなものを産直に出すのだそうだ。
「大きい物より小さい方が料理の用途は広いんですよ」。自宅に戻り、太田さんの話を聞きながらメモを取っていると、「今、取ったのをバターいためにしてみました。食べてみてください」と母親の信子さんが入ってきた。
塩コショウで味付けしたエリンギを口に入れてみた。歯ごたえがよく、キノコとは思えないしゃきっとした食感が心地よい。わが家では野菜といためる機会が多いが、シンプルなバターいためだとエリンギそのものの味がよく分かる。
「うちではさっと火を通して何にでも入れます。冬ならすきやきなどの鍋物にもいい。野菜と一緒にいためるとだしも出ます。産直館のお客さんには、いため物が一番喜ばれているようです」と料理担当の信子さんが解説してくれた。「えっ」と思ったのがかす漬け。蒸してから酒かすに漬けるのだという。いろんな料理法があるものだと感じた。
信子さんのおすすめレシピはブナシメジとのスパゲティ。いためすぎないのがポイントだ。エリンギは冷めても独特の食感が失われない。「へたっ」としないので、弁当の材料にも向く。
通年栽培の人もいるが、太田さんは「価格、需要が落ちる」夏場はオフに充て、9月下旬から5月ぐらいまで出荷している。産直館では1袋100円前後で販売している。
エリンギ180g、ブナシメジ180g、ニンニク4かけ、赤トウガラシ1本、サラダ油大さじ2、バター大さじ2、白ワイン大さじ3,青ジソ4~5枚、塩適宜、コショウ少々
メモ エリンギは歯ごたえが魅力。いためすぎないように注意する。
2007年1月20日付紙面掲載