「春を感じさせる冬の野菜」。アスパラ菜にはそんなイメージを持っていた。アスパラガスの風味に似たほろ苦い味をした茎と、菜の花を思わせる花から名が付いたのだろうかなどと考えながら、酒田市の産直施設「みどりの里山居館」を訪れた。
「アスパラ菜はオータムポエムとも言います」。出迎えてくれた田中亮治さん=広野=の口からロマンチックな響きの単語が飛び出した。中国野菜を改良した新野菜らしいが、今では庄内地方の食卓にもすっかり定着した感がある。
「今シーズン、約10年ぶりにアスパラ菜を植えてみました。朝市から直売を始めましたが、『この間、おいしかったよ』と生の声が伝わるのが楽しい。今は野菜の80%が直売用。不作などのリスクを避けるため20種類近くを作っています」と笑顔で話す。
アスパラ菜はハウスで栽培している。8月末に5粒単位で種をまき、芽が出たところで成長を見ながら3本を間引きして2本残す。農薬の代わりにニンニクや赤トウガラシ、カニの殻などいろんなものを混ぜ合わせた木酢液を使うのが「田中流」。12月初めに収穫が始まる。「最初のころは青ぐさみがありますが、寒くなると甘みが出てきます。今が一番おいしい時期です」と話す。
苦みと甘みの「同居」がアスパラ菜の持ち味。「個人的な好みもあるかもしれませんが、茎の部分が甘くておいしい。私は太いものを選びます。直売所に来る人も太い方を好むようです。花は器に盛ると春をイメージさせ、見た目もいいと思います」。
「残り物を毎日食べている」という田中家のアスパラ菜料理は、世代によって好みが違う。「両親はゆでてかつお節としょうゆで食べます。マヨネーズは苦手のようです。子どもたちは苦みを嫌い、いためたものがいいようで、韓国風お好み焼きのチヂミが一番好きですね」と笑う。わが家ではさっとゆでて、辛子マヨネーズにしょうゆを加えているが、いためものもよさそうだ。
田中さんが最近、はまっているのが漬け物作り。アスパラ菜ももちろん使う。「さっとお湯をかけてくさみを取り、塩だけで浅漬けにします。茎が太い場合は半分に切ってください。酒のつまみ、お茶請けに最適ですよ」。浅漬けもぜひ試してみたいと思った。
おすすめレシピは子どもたちも喜びそうなアスパラ菜と魚介のチヂミ。アスパラ菜はカロテンが豊富で、肌荒れの防止などにも効果がある。和洋中華と幅広い料理に使える。
「追肥をしても栄養分を吸わないので、管理が難しい。一つの株から収穫は何度もできるが、これからは細くなっていく」というから今がまさに食べごろなのだろう。朝取りだけに新鮮そのもの。取材した日は平日ながら、オープンから30分ほどで出荷した10把を完売した。
200g入って100~110円。3月まで山居館のほかヨッテーネ、「酒田海鮮市場」内の海の八百屋でも販売している。
アスパラ菜1/2把、シーフードミックス(冷凍)200g、A(白玉粉20g、小麦粉30g、卵1個、水大さじ4)、ごま油大さじ1~2、たれ(ごま油大さじ1~2、しょうゆ小さじ1,塩少々)
2007年1月27日付紙面掲載