今回取り上げる素材は「なばな」。初めて聞くという人も多いかもしれないが、漢字で表記すれば分かるだろう。「菜花」、つまり菜の花のことだ。
「何度も収穫できるから、うちのようにハウスが少ない農家にとっては、効率のよい野菜なんですよ」。酒田市の「みどりの里山居館」になばなを出荷している高橋正志さん=漆曽根=が笑った。
高橋さんは、旧酒田市の産直の先駆けとなった「んめちゃ市場」の初代会長を務めた。「時間がなくて対面販売の『んめちゃ』には今は参加していません。でも『んめちゃ』、ヨッテーネ、そして山居館と、産直は着実に成長しています。売れているというのを肌で実感できるのがいいですね」とうれしそうに話す。
高橋さんにとって、なばなはアスパラ菜と並ぶ冬場の主力作物。10月に種をまき、11月に定植、年明けから収穫が始まる。主幹を摘んでも支幹が次々と出てくる。花が開くころに収穫期を迎える。茎の部分とつぼみを食べる。「寒い時期に甘みが増します。アスパラ菜やホウレン草もそうですが、ハウスなので無農薬栽培できるのがうれしいですね」。
なばなはアブラナ科の緑黄野菜。春を先取りする点が珍重される。ビタミンCやカルシウム、鉄分、タンパク質、βカロテンなどを豊富に含み、骨や歯を丈夫にしたい人にはおすすめだ。美肌効果も期待できる。
あえ物や吸い物、いため物、天ぷらなど幅広い料理法がある。その中で高橋さんが「あれが一番」と推奨するのがからしあえ。ゆでたなばなにからしじょうゆをまぶすという単純な料理だが、ほんのりした苦みと野菜の持つ甘みを味わうには最適だ。
高橋家ではマヨネーズをかけたり、かつお節としょうゆなどでおひたしにすることも多い。「苦みとからみ、なばなの品の良い味」を楽しむのに適しているからだ。
「んめちゃ市場」のオープンに合わせて始めたなばなの栽培も8年になる。最近は「固定ファンもついてきた」と感じている。
おいしいなばなの選び方について「しゃきっとした物を選んでください。鮮度がいいと甘みが違います」と教えてくれた。高橋さんは「葉がしおれやすい」という点を考慮し、出荷の際には葉がある上の部分を密封、空気が入らないような工夫も施している。
帰宅後、取れたてのなばなを試食してみた。料理法はもちろん、高橋さんおすすめのからしあえ。からしとなばなは確かによく合う。吸い物にも入れてみた。ほんのりとしたからみはまさに春の味。高橋さんが表現する「品の良さ」を堪能することができた。同時に「冬の間に食べれば春の息吹を感じるだろうな」と思わせる「大人の味」でもあった。
例年なら3月末まであるが、暖冬の今年は収穫期が早まった。山居館では200g入り100円で3月中旬まで販売している。
なばな1束、練りからし、しょうゆ
2007年2月24日付紙面掲載