今回、取り上げるのは四月しろ菜という葉野菜だ。「しろ」をひらがなにするのは、漢字で「白菜」と書くと、「ハクサイ」と混同されるかららしい。「あまり聞かない名前だが、どんな野菜なんだろう」と思いながら、酒田市平田地域のめんたま畑に出荷している菅原敬子さん=泉興野=を訪ねた。
「一見、小松菜みたいでしょう。これが四月しろ菜です」。菅原さんが収穫した四月しろ菜を見せてくれた。確かに小松菜に似ているが、茎は白い部分が多い。上は小松菜、下はチンゲンサイと言えば、イメージできるだろうか。
「うちはハウスで作っているので、育苗の作業前に根っこごと収穫します。露地栽培の人は、しんの外側の葉だけを取り、また生えてきたら取るというように繰り返し摘んでいきます。丈が長くなるとタイサイみたいですよ」と話す。
タイサイも聞き慣れない名前だが、庄内では漬物にして、弁慶おにぎりを巻く時に利用されてきた。内陸で使う青菜とは別物だという。
「露地栽培だと名前の通り、4月に出てきます。昔は雪が溶けて最初に食べる青物でした」。なるほど春を告げる味だったのか。自らの不明を恥じることしきりだった。
どんな味がするのだろうと聞いてみると、「小松菜より歯ごたえがあり、しゃきっとしているかも」という答え。料理法は「小松菜より白い部分が多いので、漬物にもできます。葉っぱはみそ汁に入れて、茎は漬物にしてみてはどうでしょう。ごまあえや、薄揚げとけんちんにしてもいい。ゆでて、からしじょうゆというのも春らしいと思います」と教えてくれた。
菅原さんのおすすめレシピはモヤシとのあえもの。「この野菜はシンプルが一番です。うちでは嫁が作ります。『おいしいのー』と言うと、『めんつゆだけだ』という答えが返ってきます」とにっこり。
帰宅後、いただいた四月しろ菜をさっとゆでて、からしじょうゆで食べてみた。あっさりしていておいしい。それと苦みもあまりない。自らを主張しない控えめな野菜という感想を持った。ハウスがない時代には、この野菜が出るのを心待ちにしていたのだろう。
菅原さんは、三重県から土壌改良材などを取り寄せ、無農薬栽培している。「コストはかかるけど、価格を上げることはできない。でも食べた人は私の野菜は甘いと言ってくれます」と笑った。菅原さんの四月しろ菜は4月上旬まで、1束90円で販売している。
モヤシ、四月しろ菜、めんつゆ
2007年3月30日付紙面掲載