産直施設を回っていると、「えっ、こんなのも庄内で作っていたの」というものに出くわすことがある。「うれしいサプライズ」とでも言えばいいだろうか。「めんたま畑でソラマメが販売されているそうです。取り上げてみませんか」。いつもお知恵を拝借している庄内総合支庁酒田農業技術普及課の地域支援専門員の呼びかけに、「それはいい。紹介してください」と二つ返事で答え、酒田市平田地域の鳥海山南麓の高台にある開拓農地に池田栄さん=東大町=を訪ねた。
池田さんは市役所を退職後に入植した。ソラマメは今回が初挑戦。県の農林水産部が発行しているマニュアル本にも栽培法が載っていないだけに手探りでのスタートになった。
昨年9月に種をまき、10月中旬に定植。粘土質で「ガラガラゴロゴロしている」土壌での畝づくりが大変なのだそうだ。雪の下で冬を越したソラマメが春の訪れとともに成長する。
「スナックエンドウのような紫色の小さな花がびっしりと咲きます」と教えてくれたのは妻の京子さん。ソラマメの実は最初、上向きに伸びるが、次第に下に垂れてくるのだそうだ。「実につやが出て、緑色が濃くなったら収穫できます」と栄さんが話す。
畑に行くと、倒れているものも目に付く。「倒伏防止用のネットを張ればよかったと後から思いました」と栄さんが苦笑する。栽培上の課題は多いが、「作りにくいとは思わないし、出来は悪くない。来年もやってみたい」と確かな手応えを感じている。
ソラマメの食べ方と言えば、頭に浮かぶのが塩ゆでだろう。「ゆでたらザルに上げて水切りし、自然にさます方がいいようです」とは京子さんのアドバイス。栄さんは「小さい方が甘くて軟らかく、大きくなると青臭い」と教えてくれた。
スーパーで見るソラマメはさやの部分が茶色くなっているが、もぎたては全体が緑色。その辺が鮮度を見るポイントかもしれない。
今月9日から収穫が始まり、はしりのころは4、5袋ぐらいずつ出していた。ピーク時にどれだけ出荷できるかは未知数という。
10本ぐらい入って1袋230円。販売価格を決めたのは京子さん。「スーパーでは290円だったので」というのが理由だが、良心的な値段も消費者にはうれしい。
「酒田市内の飲食店のママさんが買っていくようです」と京子さん。カウンター席でソラマメを手に生ビールをぐびりと飲む男性客の姿が目に浮かぶ。実にうらやましい。
子どもたちも食べられるようにと、いただいたソラマメは豆ご飯にしてみた。「さやを割って豆を取り出し、爪を取り、反対側に切れ目を入れると食べやすいですよ」という京子さんの教えに従い下ごしらえした。鮮やかな黄緑はヒスイのような上品な色合いで、炊きあがったご飯とソラマメの相性は抜群。甘みもあり、夏到来を感じさせる味わいだった。
枝豆と同様にソラマメも鮮度が大切、朝取りに限ると思わずにいられない。池田さんのソラマメは今月末まで、めんたま畑で買うことができる。
ソラマメ20粒(さや付きで300gぐらい)、厚揚げ1枚、豚薄切り肉200g、ショウガ小1片、ごま油、合わせ調味料(酒、みりん、みそ各大さじ1、カキ油小さじ1、パイナップルジュース1/2カップ、砂糖大さじ1、水1/2カップ)
2007年6月23日付紙面掲載