今回取り上げるのはエゴマの葉という青ジソに似た野菜だ。恥ずかしながらその存在を知ったのは最近のことだ。このコーナーで取材におじゃました遊佐町の農家に、アロエベラと牛乳と一緒にジュースにしてごちそうになった。ゴマの実のような外観だが、かむとふかふかする。不思議な野菜だと思った記憶がある。
8月の今、エゴマの実はまだ出ていない。食材になるのは葉の方だ。三川町の道の駅みかわ内にある「物産館マイデル」に出荷している加藤喜美子さん=押切新田=の自宅を訪ねた。加藤家に来るのは実は2度目。昨年9月に糸カボチャの取材で長男の昌嗣さんにお話を聞いた。
「息子が種を買ってきて、栄養価が高いと言うので、半信半疑でまいてみました。青ジソと同じシソ科で形も同じです。でも味の方は違うみたい」。加藤さんが栽培を始めた経緯を語る。
エゴマは東アジアや韓国で盛んに栽培されている。日本でも焼き肉店でサンチェなどと一緒に出されることがあり、肉をくるんで食べるらしい。加藤さんも「肉料理と合うようです」と話す。
昨年、おじゃました際は糸カボチャの酢の物、いため物などをごちそうになった。その腕前に感心したが、今回もおいしい料理を用意してくれていた。
「これは豚肉をエゴマの葉ととろけるタイプのチーズで巻いて揚げたもの。ちょっとすりおろしニンニクも入れてみました。こっちはみそを付けて弁慶おにぎりにしてみたの」。
さっそくいただいた。揚げ物は何とも表現しにくい香りが肉とチーズと微妙なハーモニーを醸し出す。からしじょうゆで食べたがおいしい。ご飯に良く合いそうだ。弁慶おにぎりは不思議な味わいと言ったらいいのだろうか。青菜漬けがない時期、わが家では青ジソで代用するが、エゴマの葉はやはり青ジソと味わいが違う。言葉でうまく言い表せないのがもどかしい。
「生だとちょっと、という感じですが、火を入れるとおいしいですよ」と話す加藤さん。最初のころはどうやって売ればいいか見当も付かず、青ジソと並べて販売していた。「買う人も何か分からなかったと思いますよ。試食させればいいのかもしれないけど、忙しくて」と笑う。
収穫したエゴマの葉を見せてもらった。外観は青ジソに似ているが、青ジソよりも厚く節が多いようだ。
ほかの直売所で見つけ、購入してみたエゴマの葉のキムチを一緒に試食した。「漬物もいいですね。マイデルの仲間と今度食べて、研究してみます。いろいろ体験してみないと、みなさんにもおすすめできないし」とにっこり。韓国の人がよく食べるだけに、キムチとの相性はばっちりだ。
帰宅後、いただいたエゴマの葉を牛肉とバターいためにしてみた。青ジソでも同じものを作り、食べ比べたが、青ジソの方がバターとは合う。トウバンジャンがなかったので、肉にトウガラシみそを付けてエゴマの葉でくるりと巻いてみた。味が全然違う。肉が引き立つ。「ミントみたいだ」と家族がつぶやくのを聞き、それだと思った。確かにミントに近い香りがする。
「10月ごろまではあるのでは」と話す加藤さんのエゴマの葉は青ジソと同じ20枚70円で販売している。葉が終わるころにはアルファリノレン酸やリノール酸など体によい油を含んだ実の方も登場しそうだ。
豚肉ローススライス400g、エゴマの葉8枚、とろけるタイプのスライスチーズ適量、小麦粉、卵2個、おろしニンニク、コショウ各少々、ソース、ケチャップなど好みの調味料。
2007年8月26日付紙面掲載