「紫イモは2種類あります。どちらがいいですか」。三川町の産直みかわで紫イモを販売している齋藤加代子さん=成田新田=に取材をお願いしたら、電話口からこんな答えが返ってきた。「おいしい方にしてください」と依頼すると、「味に優劣はないです。用途が違います」。無知をさらけだした自分を恥じた。
紫イモはお菓子などの「加工用」と焼きいもなど素材の味を楽しむ「そのまま」に分かれるそうだ。自宅を訪ねると、齋藤さんが笑顔で迎えてくれた。
「取材に来てくれるというので作ってみました」。テーブルに紫イモのプリンとシフォンケーキが並んだ。プリンはふじ色に近い上品な紫、シフォンケーキはナイフを入れると紫色が点在している。「加工用を使いました。焼くと色がきれいに出ないんです。手を加えるのが好きな人は加工用の方がいいと思いますよ」。かなりのお料理上手とお見受けした。
まずプリンをいただく。イモの味がするが、「もたっ」という感じはない。シフォンケーキは作り手の心が伝わる優しい味がする。「集まりがある時、作っていくとみんな喜んでくれます」というのもうなずける。
続いて紫イモの茎のいため物が登場。「茎はどちらも変わりません。いためる前にさっと湯通ししてあります」。赤ミズよりくせがなく歯ごたえがある。ご飯にもつまみにも合いそうだ。「塩蔵しておけば冬も食べられますよ」。
肝心の紫イモを見ていないことに気が付いた。並べると微妙に違う。加工用は黒っぽく、「そのまま」はそれより赤が強い紫色。サツマイモの代表格ベニアズマと比べると紫色が強いが、素人目にはよく分からない。
「切ってみましょう。全然違いますよ」。加工用の切り口から「樹液」のような白い液体が出てきた。「あくです。ゆで汁も真っ黒になりますよ。色素が強いんでしょうね」と齋藤さん。「そのまま」から樹液は出ない。「加工用は水分が多い」というのが持ち味の違いだ。
料理法は「そのままはゆでたりふかしたり、衣をさっと付ける天ぷらが合います。ベニアズマよりさっぱりした感じです。加工用はクッキーやパウンドケーキ、パイのあん、アイスクリームにもいいです」。用途がきれいに分かれた。
齋藤さんのおすすめレシピは「まず失敗しない」というプリン。プリン・ゼリーの素とは「○リ○ガー」という商品。「紫イモはゆでた後、つぶしてビニール袋に入れて冷凍しておけば、いつでも使えますよ」。おやつ作りに重宝しそうだ。赤ワインで有名になったポリフェノールを豊富に含んでいる。老化防止やダイエット効果も期待できる。
掲載予定日を教えたら「試食用にプリンを作っていこうかしら」とうれしい答え。実家がある前橋市の友人から苗を取り寄せ、無農薬で栽培している齋藤さんの紫イモは、加工用、「そのまま」とも400グラム前後で120円、茎は1束100~200円。イモの方は産直みかわで年末まで販売している。
紫イモ250g、砂糖180g、牛乳600g、水600cc、プリンまたはゼリーの素大さじ5
2007年9月22日付紙面掲載