ジャガイモというと、男爵やメークインを思い浮かべる人が多いのではないか。今回取り上げるのは鶴岡市の百万石の里・しゃきっとの佐藤清子店長一押しのキタアカリという品種だ。取材を渋る生産者の田中重孝さん=下川=を「有無を言わさず頼むから」と店長自ら説得してくれた。
田中さんの自宅を訪れると茶の間に通された。「クリみたいだから食べてみれ」。ゆかしたキタアカリをお母さんが皿に盛ってきてくれた。「えっ、これがジャガイモ」と目をぱちくり。皮が捕れたジャガイモの表面が黄色い。小さいのを何も言わずに出されたら、クリと思って食べてしまうだろう。
ふかしたてのキタアカリをさっそく口に入れてみた。ホクホクして甘い。普段ジャガイモをあまり意識して食べたことがなかったが、これなら学校から帰ってきた子どもが喜んで飛びつきそうだ。論より証拠。幼稚園の年長組という田中さんの下の男の子が皿に手を伸ばす。「おいしい?」と聞くと、うなずきながら口をもぐもぐさせている。
キタアカリは昭和60年代、北海道で開発された品種だそうだ。食味がよく、男爵より多くの収量が見込める。ビタミンCを多く含むという利点がある半面、荷崩れしやすい。「ポテトチップなどの加工品や煮込む料理には向いていないようです」。
でもこの味は捨てがたい。ぜひ煮物にも使ってみたいと思ったら「肉じゃがにするなら味付けする直前に入れるといい。カレーに使うと、イモの実がトロトロになる。おいしいですよ」とお母さんが助け船を出す。ポテトサラダなど素材そのものを味わう料理に合うようだ。
田中さんは、自家用に以前から数種類のジャガイモを植えていた。3年前にキタアカリを導入、しゃきっとで販売を開始した。
4月に種イモを植える。「病気に強くないので、本当は薬をかけた方がいいらしいんですが、忙しくて…」。無農薬栽培は消費者にとって大歓迎。6月から収穫が始まり、小さいものからしゃきっとで販売している。「タマネギもそうですが、最近は小さい方が人気があるようです」と話す。
おすすめレシピは佐藤店長の出番。「私は休みの日、キタアカリをラップにくるんでレンジで温め、塩とバターをつけて食べます。簡単グラタンもおいしいですよ」とPRする。
田中さんにキタアカリとタマネギをちょうだいした。「しゃきっとでこの2つを買ってカレーや肉じゃがを作るのもよさそうだ」。そう口にしたら「これでニンジンでもあれば最高なんでしょうが、作っていないんです」と豪快な笑いが返ってきた。
田中さんのキタアカリは約500g(大なら4個程度)入って90円。しゃきっとで10月半ばまで販売している。
キタアカリ、タマネギ、ベーコン、サラダ油、塩コショウ、バター、とろけるタイプのチーズ
2007年9月29日付紙面掲載