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「原木ナメコ」違いは甘みとぬめり

「夜が明ける前に山に入るんですよ。今日は一番近い栽培地が収穫期を迎えています」。鶴岡市の産直あさひグーに原木ナメコを出荷している大滝澄さん=上田沢=の自宅を訪ねると、長女の山口弘美さんが笑顔で出迎えてくれた。

「ここから車で10分ほど山に入ります。舗装されていないので今日は遠回りして行きましょう」。山口さんの運転で山へと向かった。ヘアピンカーブが続く林道を四駆が駆け上がる。ハンドルを操りながら、いろいろと話してくれた。

「菌を植えるホダ木はクルミの木を使います。春にドリルで穴を開けて菌を植え、翌年の秋に出てきます」。収穫まで1年半かかると聞いてびっくり。「天然の条件に近づけるため、山の中で栽培するのです」。なるほど山の恵みは大自然の中ではぐくまれるのかと納得した。

「今と春の山菜の時期、わが家では教員をしている夫が主婦役。でも土日は山を手伝ってくれます。マイナスイオンのシャワーが心地よいのでしょう」。

20分以上が経過しただろうか。方角が全く分からない山中で車が止まった。森林が放つマイナスイオンが確かに気持ちいい。空気が冷たくておいしい。

「獣道」を10分近く登ったところでホダ木が横たわる斜面に到着した。「ラジオと爆竹、鈴が私の三種の神器。今年はクマがいないといっても1人だと怖い。山に入ったらまず爆竹を鳴らし、大声であいさつするのが毎日の儀式です」。破裂音がこだました。

ホダ木にナメコがたくさん張り付いている。「トチの実のような茶色が強いものをトチナメコと呼びます。これがおいしいのです」と話しながら山口さんが採っていく。「小さいのは残しておいて、『明日までに大きくなっていろよ』と話しかけて翌朝採ります。その通りに育っているとうれしい。子どもみたいな存在です」と笑った。

根っから山好きだという山口さんにとって今の仕事が"天職"に見える。だが、「10年前まで高校で国語と古典を教えていました。華麗なるトラバーユです」と聞いてまたまたびっくり。30分ほどでかごの中はいっぱいになった。ピーク時は1日で50kgを収穫して山を下りるというからすごい。

通年出回っている菌床ナメコと違って山口さんの原木ナメコはぬめりがあり輝いている。「甘みとぬめり、そして食感が違います。30年前は直径1cmほどの小さなものが1級でした。今はかさの開いた『開き』が人気です」と教えてくれた。

原木は天然と比べて味も遜色(そんしょく)がない。「収穫期をきちんととらえることができるので、よりタイムリーに旬のものを提供できると思いますよ」と胸を張った。

ナメコはみそ汁、おすまし、いりナメコ、ナメコおろしなどご飯のお供に最適。「生のまま袋に入れて冷凍しておくのがおすすめです。沸騰したみそ汁に入れると旬の食感がいつでも味わえます。塩蔵だとぺたっとなりますから」と話す。

湯野浜温泉のある旅館の朝食に出てくるナメコの雑炊が好きだ。その話をすると「うちのナメコがそこに行っています。なるほど雑炊もおいしいかも」という答えが返ってきた。

急な斜面に横たわるホダ木にはたくさんのナメコが張り付いていた

帰社後、編集局のスタッフと山口さんのナメコをすまし汁でいただいた。「菌床では味わえないぬめりがたまらない」という声が出た。水洗いが面倒だが、「手間をかけてよかった」と思える味わいだ。 今年はキノコ類の出が遅いが、山口さんのナメコは例年通り。「『何でおまえのうちだけ採れるんだ』と聞かれると、『愛だ―』と答えています」。笑顔がはじけた。

産直あさひグーでは21日まできのこまつりを開催している。「たくさんあって安いですよ。『旬の味』という赤いラベルがうちの目印です」とPRする。

山口さんが愛情をたっぷり注いだ原木ナメコは100g当たり100円前後の価格で12月まで販売している。

山口さんのおすすめレシピ

ナメコおろし

○材料

ナメコ、大根、しょうゆ

○作り方

  1. 鍋でナメコをいりつける。ぬめりが出て火が通ったら器に盛る。
  2. 大根をおろし、1にみぞれのようにふりかける。
  3. しょうゆをかける。

2007年10月20日付紙面掲載

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