「次回取り上げる素材はキクイモでどうでしょう。漬物にするとおいしいですよ。漬物作りが上手な人を紹介してもらいます」。県庄内総合支庁酒田農業技術課からの誘いに「『漬物名人』。それはいい」と二つ返事で応じ、酒田市平田地域のめんたま畑で販売している佐藤三恵さん=中野俣=を訪ねた。
「友人に5年ほど前、種をもらってから植えています。かす漬けにすれば1年置けるし、きんぴらにしてもおいしいですよ」と佐藤さんが笑顔で迎えてくれた。
名前は聞いたことがあるが、キクイモの現物は目にしたことがない。どんなものだろうと思っていると、さっそく皿に載せて持ってきてくれた。
「えっー、これは」。一瞬言葉に詰まる。ジャガイモとショウガを足して二で割る、という表現で分かってもらえるだろうか。どちらかと言うと、ショウガに近い気がする。「黙って出されたら、すりおろしてしまいそうですね」と口にしたら大笑いされてしまった。
キクイモは菊科なのに、イモの名が付く不思議な作物だ。秋になると地中に付く「実」が食用になる。このコーナーで前にも出合ったことがあると記憶をたぐり寄せ、ヤーコンがやはり菊科だったことを思い出した。
「ヤーコンと同じような料理で食べます。漬物ならかす漬けかからし漬け。天ぷらもいいですよ」。昨年、ヤーコンを取材した時にいただいたかす漬けはとてもおいしかった。キクイモはどんな味がするのだろうと想像が膨らむ。
しかし、「かす漬けは3回に分けて漬けるので収穫から3カ月かかります。今年はまだです」と期待は空振りに終わった。代わりにカタウリとキュウリのかす漬けを出してくれた。
「ちょっと甘いかもしれませんよ」と言われたが、砂糖と酒かすがほどよく調和している。カタウリ、キュウリ、どちらもサクサクとして歯触りがいい。漬物名人の技を堪能したが、「キクイモはもっとカリッとしていて、かす臭さがありませんよ」と聞くと「食べたいモード」は増すばかりだ。
今年初めて生のキクイモを販売したところ「知っている人がいるのでしょう。1kg入りの生のものが売れています」と話す。キクイモはイヌリンという食物繊維を多く含み、糖尿病や肥満の予防、便秘解消などへの効能が期待できるそうだ。そこが人気の秘密かもしれない。
佐藤さんのおすすめレシピはもちろんかす漬け。3カ月間、待つのはつらいが、不慣れな人でも作れそうな気がする。苦心の末に最近、完成したという赤ネギの甘酢漬けもごちそうになった。こちらもおいしかったが、作り方は「企業秘密」と教えてもらえなかった。
いただいたキクイモを編集局の女性スタッフの1人が持ち帰った。きんぴらにしたら「切った感じはヤーコンみたい。火が通るのが早くて、食べるとくせがなかった」と満足そうだった。
佐藤さんのキクイモのかす漬けは来年3月まで待たなければならないが、からし漬けは1月中旬に出してくれるそうだ。生のキクイモは300gで120円、1kgは250円。赤ネギの甘酢漬け、カタウリ、キュウリのかす漬けは常時販売しているので、漬物好きの人はぜひお試しを。
キクイモ 4kg、酒かす 2.5kg、塩 700g、砂糖 1.5kg
2007年12月14日付紙面掲載