キノコが大好きだ。昨年秋に原木ナメコを取材したときは、山に入るのがうれしくてたまらなかった。今回は、読者の方にもなじみが深いであろうヒラタケを取り上げる。
「いつもの年なら12月で終わりますが、今シーズンは夏から秋にかけて気温が下がらなかったためか出るのが遅く、年が明けても収穫できます」。遊佐町の道の駅「ふらっと」でヒラタケを販売している伊藤喜美子さん=野沢=が話す。
突然の寒波襲来で温かい食べ物が恋しい。鍋物の具材になるヒラタケの収穫遅れは大歓迎。「12月で終了」の言葉で「季節はずれか」とどきりとしたが、胸をなで下ろした。
伊藤さんは栽培歴20年以上を誇る。シイタケやエノキダケのような菌床栽培と思ったら、より自然条件に近づけた「トロ箱自然栽培」という方法を採用しているそうだ。1月下旬から2月にかけて菌を仕込む。木箱におがくずを敷き詰めて箱ごと度の高温で5時間殺菌し、温度が下がってから種菌を植える。ハウス栽培だが、冷暖房は使わない。だから気温が出荷時期に影響を与えるのだろう。
自宅そばの倉庫で収穫したヒラタケを見せてもらった。入った瞬間、キノコ独特の香りが鼻に飛び込んでくる。好きな人には好ましいにおいだ。やや黒みがかった灰色。かさが開いていておいしそうだ。
煮物、いため物、鍋物などいろんな食べ方ができるのもヒラタケの持ち味。「大きいのは天ぷらがいいと思います。ほかにみそ汁、バターソテー、炊き込みご飯もおいしいし、肉料理にすごくあいます。タケノコとの炊き合わせもいいですよ」と教えてくれた。v
ヒラタケを料理する際の「裏技」を聞いた。「洗っているうちにちぎれたりして形が崩れやすい。さっとお湯にくぐらせると、防ぐことができますよ」。洗う代わりにお湯を通すというのがきれいに使うポイントらしい。
おいしいヒラタケの選び方について「白っぽいものより、グレーが強く肉厚なのがいいですよ」とアドバイスしてくれた。「時間がたつと白い粉が出てくることがあります。胞子です。見た目が悪く、買う人はいやがりますが、うまみ成分のアミノ酸ですから大丈夫です」。気にする必要はなさそうだ。
伊藤さんのおすすめレシピは炊き込みご飯。「うちではガス釜を使っています。各家庭にそれぞれの味があると思うので、分量は入れていません。参考程度にしておいてください」と笑った。
帰宅後、ヒラタケを鶏肉とサトイモと一緒に煮物にした。だし汁にふくらみが増し、ふだんキノコを食べない子どももヒラタケを口に入れた。翌朝は炊き込みご飯にしてみた。鶏肉は使わなかったが、ヒラタケと野菜だけで十分に味が出た。次は何を作ってみようかと楽しい気分にさせてくれる。
伊藤さんのヒラタケは200g入って1袋180円。2月いっぱいふらっとで販売している。
ヒラタケ、薄揚げ、ニンジン、コンニャク、米、もち米、しょうゆ、砂糖など好みの調味料
2008年1月19日付紙面掲載