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探求の旅、読者と共に

読者から「庄内浜の磯釣りで、コブダイという魚が釣れると聞きました。どんな魚ですか。見たことがありませんが、市場には揚がりますか」という質問をいただきました。

釣り好きの魚屋さんに聞いたら、飛島や新潟県の粟島で5月から8月にかけて釣れるということでした。餌はサザエで、コブダイはサザエを殻ごと食べられるほど丈夫な歯を持っているとのことでした。引きが強く、当たりがあると「おーっ」と思うものの、釣り上げてがっかりするのだそうです。

コブダイは海にそれほど多くいる魚ではありません。白身魚に属します。でも、庄内ではタイやヒラメ、スズキ、メバル、アイナメなど白身が豊富なので、あまり好まれた魚ではないようです。大きい物で5、6キロ、体長1メートルほどに達しますが、鶴岡市場に入るものは1、2キロが主流です。

コブダイは名前の通り頭にこぶがあります。市場にはなかなか揚がりません=県水産試験場提供

仲買人や料理屋さんに食べ方を聞いてみたところ「あれは刺し身だよ」「切り身にしてみそ漬けがうまい」という声が聞こえてきました。食べる習慣があまりないため、料理のレパートリーは広がらなかったのでしょう。

東京など関東では「寒鯛(かんだい)」と呼び、フランス料理でポアレ(フライパンで焼く料理)やムニエル、ブイヤベース、イタリアンでカルパッチョなどにしているようです。寒鯛というぐらいですから冬が旬。脂がのり、身に透明感があり、もちっとした食感だそうです。評論家には「味がいい割に安い魚だ」と言う人もいるとのことです。

コブダイは成長に従い、色や形が変わっていきます。小さい時は体がオレンジ色で、白い側線が入っています。ベラ科に属し、ふ化から1カ月後ぐらいは熱帯魚のようです。成長すると雌から雄に性転換します。雄になったものは名前の通り、頭に脂肪分でできた大きなこぶがあり、それが大きいほど強いのです。クロダイも性転換しますが、雄から雌になるのでコブダイとは逆です。コブダイは捕れる地域で体の色や形も多少違います。

このコーナーも今回で100回になりました。私自身、最初は手探り状態でした。徐々に読者も増え、質問もいただけるようになりました。続けていくうちに「皆さんはこんなことを知りたいんだ」というのが分かってきましたし、このようなきっかけがなければ、私も調べたり、人に聞いたりすることがなかったと思います。とても感謝しています。

庄内でも捕れるのに食文化がない素材もありました。伝わっていなければ、われわれが新しい食べ方を提案する。そしてその素材がクローズアップされることで、新たな食文化の構築にもつながる。おいしい魚においしい食べ方がくっつけば、食文化として根付くのではないでしょうか。

これからも皆さんが不思議に思ったことから、いろんな発見をしたいと思います。また、自分で調べたり、人に聞いたりして間違って伝えてしまったこともあるかもしれません。どうかお許しください。読者の方と「不思議」を共有して、これからも魚探求の旅を続けたいと思います。

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店専務・手塚太一)
2008年7月11日付紙面掲載

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