読者から「底引き網漁が解禁になった今の時期、煮付けにするとおいしい魚を教えてください」という質問をいただきました。
質問に答える前に、底引き網漁について簡単に説明します。底引き網船、つまりトロール船は9月1日午前零時から出漁できます。第一弾は、その日の夕方に漁港に水揚げされるので、小売店には翌2日に並ぶのが一般的です。トロールの解禁はうれしいのですが、まだ気温が高いという点が私には心配です。なぜだと思いますか。
庄内浜で行われる漁の中で底引き網漁は、はえ縄、定置網に次いで鮮度のよい魚が捕れる漁です。底引き網漁、海底を網で引いていく漁ですから、傷んでいる魚が引っかかることもあります。7、8月の2カ月の自主規制の禁漁効果で、最初は水揚げ量も多いでしょう。すると、網に負担がかかり、体が傷んだ魚が入る比率も高くなります。漁師さんたちは品質保持の努力をしていますが、暑さに漁獲が多いことも加わり、氷が魚に十分、行き渡らないケースも出てきます。品定めはいつにもまして慎重にしなければいけません。
魚を選ぶ時の一番のポイントは、魚体の色がいつもより白いもの、つやがないものは避けた方がいいです。魚を見慣れていないと分かりにくいかもしれませんが、注意して見てください。
燃料費が高くなり、底引き網船は1日の解禁直後、あまり遠くまで行かないのではないかと言われています。今なら、船で6時間ほどかかる「最上堆」という海域に、タラやスケトウダラ、ハタハタなどがたくさんいます。解禁直後はこれらの魚は見られないかもしれません。
さて本題です。今の時期、煮魚に一押しの魚はエンショウガレイです。標準和名はマコガレイ。ここ2カ月間は秋田や青森産が入荷していましたが、やっと地物が食べられるようになります。大型のものがおすすめで、重さにすると700~800グラムぐらいでしょうか。今はとても肉厚で脂ものり、食べごろです。もちろん、刺し身にしてもおいしいです。
エンショウガレイは6月からおいしくなり、9月末までがピークです。10月に入ると卵を抱きます。首都圏では子持ちがもてはやされますが、庄内では旬から外れたと判断されます。腹に子が入ると、地元の消費はあまりないし、東京で高く売れるので、多く出荷されます。2月の産卵期に向けてこれからは徐々に青臭みが出てきます。
卵が入った方がおいしいのがアカガレイです。今はまだ子持ちはありません。魚体が弱いので、出だしはあまりいいものはないかもしれません。タラがおいしくなっていますが、20日以降に捕り始めるようです。アカラ、カスベもいいですが、これも沖合にいる魚ですから、お目にかかるのはもう少し先になりそうです。アカラは酒田では柳の舞と呼びます。焼き物と思っている人も多いでしょうが、煮付けもおいしく、わが家ではよく食べます。
明るい話題をお知らせします。県の試験調査船「最上丸」の調査で、今年は大型のハタハタが多いようだという結果が出ました。昨年は大型のものはほとんど揚がりませんでした。ハタハタは消費者ニーズの高い魚なので、狙いに出る船も一部にあるかもしれません。新潟県村上市(旧山北町)の寝屋港所属の船は、最初からハタハタ狙いに走るそうです。ハタハタは今がおいしい魚です。海の中で固まっているので、捕れれば量的には多くなると思います。
(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店社長・手塚太一)
2008年9月4日付紙面掲載