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刺し身に合うホウボウ

読者から「『昔は、漁師さんの網にかかった雑魚(狙い以外の魚)の中には、市場では見向きもされなかったものもあったが、行商のあばさんが消費者に届けていた』と新聞に載っていました。そんな雑魚の中で今、脚光を浴びているものや安いけれどおいしいものがあれば教えてください」という質問をいただきました。

稚魚は「ざつぎょ」「ざこ」と読み、商品価値の低い魚、または小魚を言います。「ちぎょ」と読めば子どもの魚のことです。このほか、雑魚は「じゃこ」とも言います。シラスを乾燥させたものがちりめんじゃこです。ただの「じゃこ」なら煮干しを指します。

質問にあった稚魚は、由良や鼠ケ関などの産地市場で競りにかけられても買う人がいない魚を言っているのでしょう。料理するには小さすぎる魚も市場では扱われません。このような魚を庄内では「わけ魚」と呼んでいます。競りにかけず、漁師仲間や水揚げに協力した人に分け前としてあげる魚のことです。

みそ汁魚だったホウボウも刺し身のおいしさが知られ、今では高級魚です

わけ魚でまず思い浮かぶのがウマヅラです。昔はネコの餌と言われるほど価値が低い魚でした。その名残から、今でも魚屋さんで餌用に買う人もいるようです。以前はウマヅラを生で食べるなんて考えませんでした。最近は、テレビなどで生食、つまり刺し身が紹介されたこともあり、庄内でもすし種や刺し身の盛り合わせに使う料理屋さんが出てきました。

前に取り上げたホウボウも今は高級魚としてもてはやされています。昔はカナガシラと同じようにみそ汁魚と言われていました。庄内ではウツムギと呼んできました。これも生食用に注目を集めるようになりました。太平洋側、特に銚子当たりで捕れたホウボウは首都圏では高級魚です。庄内でも今はみそ汁で食べる人は少ないでしょう。

わけ魚の値段が高くなった理由は、情報化社会が進み、生食の利用が増え、食べ方も広まったことがあります。今も値が張る魚ではありませんが、ノロもわけ魚と言っていいでしょう。海岸など特定の地域で食べていたものを行商の人たちが説明しながら売り歩いたのです。あばさんたちの手柄と言ってよいでしょう。

 以前は、庄内浜に揚がった魚の大半が地元で消費され、他県に流通していたのはタイ、ヒラメ、アマエビぐらいでした。情報化社会の到来で、より高く売れる地域に出荷される魚が出てきました。それとともに庄内における販売価格も大都市に近いレベルに上がったとも言えます。

今回、注目したいのが前に取り上げたユメカサゴです。ノドグロと呼ぶ地方もあります。これもみそ汁魚で、販売対象ではありませんでしたが、今は1匹しか揚がらなくとも競りにかけられるようになりました。白身魚の中でもかなり上品な味です。大量には捕れないため、希少価値があり高級魚となっています。

安いけれどおいしいわけ魚は港にいけばいっぱいあるでしょう。わたしが知らないものもたくさんあると思います。わたしもこれから、消費者の皆さんと一緒になって、安くておいしいわけ魚を見つけていきたいと思います。

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店社長・手塚太一)
2009年2月24日付紙面掲載

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