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夏のスズキは洗いが一番

読者から「スーパーの店頭でスズキの刺し身を見ました。夏の魚だと思っていましたが、今の時期もおいしいのでしょうか。秋には最上川河口でも釣れるようですが、海で捕れるものと味に違いはありますか。料理法も教えてください」という質問をいただきました。

魚の旬については、前にも取り上げました。その魚がたくさん捕れる時期、または最も脂が乗っておいしい時期という2つのとらえ方があると思います。ハタハタに置き換えると、本当においしいのは秋口であり、たくさん出回るのは12月の大黒様あたりということになるでしょうか。

スズキは秋から冬にかけてたくさん水揚げされる魚です。冬の終わりに産卵するので、その前は食欲も旺盛です。最上川では秋に落ちアユが上流から海に降りてきます。それを目当てにスズキが河口付近や浜近くに集まります。ルアー釣りや刺し網漁、定置網漁などでスズキがたくさん捕れるのです。水揚げ量から言えば、その時期が旬です。一方、脂が乗っておいしい時期は春の終わりから夏にかけてです。 

スズキは捕れた時期で味が大きく違う魚です

スズキがなぜ、海水、淡水の両方にいるのかは分かっていないそうです。海と川で味に違いはあるのか、ということですが、スズキはすんでいる場所の水のにおいが体に付きやすい魚です。私見ですが、淡水の方がにおいが発生しやすいので、海にすむスズキの方がおいしいのではないかと思います。

調理法については、魚全般に言えることですが、身の質や季節に応じて変えた方がいいでしょう。夏に鮮度の良いスズキが手に入ったら、洗いが一番だと思います。薄切りにして身が白くなるまで氷水に入れ、余分な脂肪を落として身を締めます。こうすると、歯触りのよい食感を味わうことができます。身がおいしく、締まってきている春なら焼き物や煮物がおいしいと思います。秋の終わりごろからは身がやせて脂の乗りも悪くなるので、バター焼きや揚げ物、ムニエル、ポワレなど油を加えてやる料理がいいでしょう。もちろん、おいしい夏にこれらの料理を作るのもOKです。

スズキはご存じのように出世魚で、小さい方からセイゴ、フッコ、スズキと成長していきます。国内にはおめでたい魚として食べる地域もあるそうです。スズキの仲間に平べったい体型をしたヒラスズキがいます。これがスズキの仲間で一番おいしいのです。タイリクスズキは、養殖用に中国、台湾、韓国などから輸入されたものが天然化した外来種です。有明海産スズキは、干潟にもすむという変わった生態をしています。都道府県別の水揚げは、天然物は千葉県、養殖物は愛媛県が1位です。庄内でも近年、好まれるようになりました。消費量は東日本より西日本の方が多いようです。水質が良いところにいる新鮮なスズキなら、肝臓や心臓、腸も食べることができると言われています。環境省がまとめている「化学物質と現場」という報告書には、東京湾のスズキを妊婦が食べる場合、専門家に相談することをすすめるという記述があります。

以前、白スズキという名前で販売されていた魚がありました。海外から輸入されたナイルパーチという淡水魚で、白身魚フライの材料になっていました。1年を通してスズキほど捕れる時期で味の優劣がはっきりする魚もそうはありません。おいしい時期のスズキは、身に透明感があり、しっかりしています。

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店社長・手塚太一)
2009年5月1日付紙面掲載

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