サクラマスは5月中旬の酒田まつりをはじめ、春の祭り料理に欠かせない魚です。なぜ庄内の祭りにサクラマスが登場するのでしょうか。マス同様にタイもお祭りには必ず付いてくる魚です。庄内のほぼ全域でマスとタイが春祭りのお膳に使われます。2つの魚にはどちらもいろんな食べ方ができることと、頭からしっぽまで、1匹を余すところなく調理できるという共通点があります。また、この時期にかなりの漁獲量が見込まれ、手に入りやすかったので、広まったということがあるようです。もちろん、旬でおいしいというのは言うまでもありません。この時期のタイは、天然物しかなかった時代でも価格が安くなり、お求めやすくなっていました。
さて、今回のメーンテーマであるおいしいサクラマスの見分け方をお教えしましょう。どんな魚でも一緒ですが、太っていることが第一です。同じ重さのものなら全長が短いもの、つまりずんぐりむっくりしているものが脂ののりがよいのです。脂が十分にのっていることがおいしいサクラマスの条件です。頭の大小も味の目安になります。小さい方がいいのです。そしてこれが究極の見分け方ですが、腹を触ってみた時に、真ん中の部分にくぼみがないものを選んでください。人間とは逆で、腹筋が割れているような筋肉質のおなかはだめです。それでは切り身の場合はどこで見分ければよいかとなります。身の色で判断します。赤いものより白っぽいオレンジ色の身の方が脂がのっています。
マスは、鶴岡では素焼き、みそやしょうゆの付け焼きのほか、蒸して食べたりします。一度凍らせて刺し身にするルイベという調理法もおいしいと思います。酒田では卵、つまりマスの子をしょうゆ漬けにして食べますが、鶴岡ではあまりやりません。北陸地方では肝臓を塩辛にするようです。
今、流通しているサクラマスの中で地物はごく一部です。料理店さんなどで消費されています。青森や秋田、岩手産のマスが多く流通しています。脂ものっていて、地物と変わらないくらいおいしいです。
庄内浜の状況についても触れておきましょう。4月はしけの日が続き、地浜物はあまり揚がりませんでした。刺し網漁でカレイ類やメバル類が若干、水揚げされています。スズキも多くなり、太ってきたのでおいしくなってきました。
(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店専務・手塚太一)
2006年4月30日付紙面掲載