お盆の帰省シーズンを迎えました。懐かしい顔が再会を果たすときです。今回は「懐かしい魚」を2回に分けて取り上げます。
帰省する親類や兄弟、孫に食べさせたいという声が多いのがクルマエビ、サザエ、岩ガキなのだそうです。この季節の庄内を代表する魚介類ですね。実際、注文も多いようです。でも帰省中に毎日、このようなものを食べるわけにはいきません。
昔、食べたもので、今はほとんど市場で見なくなったものにアブラコがあります。磯釣りではよく揚がっているようですから、海には今もいるのでしょうが、漁業では捕れなくなりました。春が旬で、塩ふり焼きや天ぷらにして食べます。
ほとんど捕れなくなった魚にタナゴの仲間のクリデがあります。クリタナゴとも呼ばれますが、沖合にすんでいて体長は5cmほど、体はオレンジ色がかっています。図鑑には載っていませんでした。市場には5、6年前までは入っていましたが、今では見なくなりました。魚屋さんの店頭では塩をまぶして陳列していたものです。食べ方は「焼く」に尽きます。昔は庄内で好んで食べられたので、年配の方はご存じだと思います。
クロダイの子であるシノコダイとカスゴ(コダイの小さいものです)も最近は見なくなりました。磯魚を捕る漁師さんがいなくなったことも原因です。うろこを取って唐揚げにしてしょうゆだれで甘辛くして食べたものでした。手を加えて食べる人もいなくなってしまいました。小さな魚は骨付きでカルシウムが豊富でカリカリしていて、子どもたちもおもしろがって食べたものでした。昔の生活パターンをみますと、お母さんは朝や午前中、魚屋さんや行商の人から魚を買い、1日がかりで家事をこなしていました。生活習慣と漁業が変わってしまったのです。
変わったものではアズキウオという魚がいます。あずき色の小さな魚で体長は5cmぐらい。やはり図鑑には載っていませんでした。串に刺して塩ふり焼きにして食べました。佃煮にした稚アユ、イシダイの子のタカバも見なくなりました。タカバはみそ汁にしてよく食べたそうです。
ここにきてイナダより小さいアオコが捕れ始めています。ナスと一緒に煮て食べます。夏場に煮物というのはいやでしたけど、私もよく食べました。好きな人はとても好きな魚、食べ方のようです。うちの社長は「アオコは大きくなったものよりうまみがある」と言っていますが、好みもあるでしょう。
この辺で捕れるわけではありませんが、クジラも懐かしい魚(生物学的にはほ乳類ですが)と言っていいのではないでしょうか。私が小さいころにはすでに「高級魚」でした。昔は学校の給食にもクジラの竜田揚げが出ていたそうです。塩クジラをジャガイモやタマネギ、ニンジンと一緒に煮たクジラ汁もありましたね。年配の方には懐かしい味ではないでしょうか。
(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店専務・手塚太一)
2006年8月15日付紙面掲載