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餌が餌を呼ぶタラ場

読者から「スーパーのチラシで地物の寒ダラが載っているのを見ることがありません。なぜ庄内のタラが出てこないのでしょうか。店頭には並んでいますか」という質問をいただきました。

スーパーにも地物のタラはあるはずです。ただ、庄内浜では魚屋さん、スーパーにまんべんなく行き渡るほど安定してタラが捕れないということがあります。

その一番の理由は庄内浜がしけやすいということです。秋田県の男鹿半島や青森などは、入江や港の方向の関係で、沖合がしけであっても漁ができる場所があるのです。一方、庄内浜では年間約100日しか出漁できないと言われています。天気の良い日にはドバッとタラが捕れたとしても、船が休めば新鮮な魚を確保するには他県のものを使わなければなりません。また、大きい船だと少々波が高くても出漁できますが、庄内の底引き船は小型なのでそうはいきません。

もう一つの理由として地域の事情もあります。庄内浜のタラは、行商のアバさんたちによりブランド化されてきました。由良ならアバさんたちが「由良ダラ、由良ダラ」と言って売り歩いたのです。昔は100人を超える行商の人が由良ダラを販売していました。水揚げがそれほどない中で、由良ダラだけを仕入れ、売っていたのです。だから価格も安くはありませんでした。人気も高く、地浜でかなりの量が消費されていたのです。

お分かりいただけたでしょうか。庄内浜では出漁日が限られ、タラの水揚げが安定していないし、全体的にみても漁獲量はそう多くはない。地元での消費量も多く、全体にはなかなか行き渡りにくい。スーパーのチラシは前もって準備しておく必要があり、庄内産と印刷するのは難しいということもあるでしょう。

ところで、魚の場合、産地は漁港で表示されています。つまり秋田県産、新潟県産というのは水揚げされた場所を指すわけです。魚そのものの品質については、庄内浜と隣県のタラそのものに大差はないと思います。極端な場合、同じ漁場で魚を捕り、帰る港が違うということもあるのです。

タラが捕れる漁場をタラ場と言います。鼠ケ関から船で1時間半ほどの沖合にあるタラ場はなだらかな岩場で、いろんな魚のすみかになっているそうです。居心地のいい場所らしく、産卵前の魚たちが集まってきます。今の時期ならタラのほかにヤリイカやアンコウ、秋口ならクチボソやカナガシラがいます。タラ場で捕れる魚はおいしいと言われています。

大きい魚は小さい魚を餌にしています。餌が餌を呼ぶ。つまり食物連鎖ですね。こういう漁場の魚はおいしいのです。

今が旬の魚にブリがあります。ブリの語源は、脂のブラがブリに転じたと言われています。それぐらい脂がのっているのです。特に寒ブリと呼ばれる今が一番おいしい時期です。富山県の氷見ブリが有名で、ブリ漁をするには地形的にも恵まれているようです。

以前にお話ししましたが、国内はサケ文化圏とブリ文化圏に分かれ、新潟県糸魚川と静岡を結んだラインが境界線になります。庄内はもちろん、サケ文化圏です。富山はブリ文化圏なので扱い方も上手です。われわれがタラを食べ尽くすのと同じようにブリを大切にしているのです。庄内以外の人に寒ダラを送ってあげたら、もらった方は身と白子、マダラ子だけ食べて、どんがらや内臓、肝臓は捨ててしまったという話を聞いたことがあります。食べ物に対する執着心がないと、食べ方まで違ってきます。

ここにきて庄内浜でタラが数多く揚がり、価格も安くなりました。食べるなら今です

われわれがブリを一本買ったとしても、身を刺し身に、カマを塩ふり焼きにして、残った身は照り焼きかブリ大根にするぐらいがせいぜいですが、向こうではえらを塩漬けにするなどいろんな料理があるようです。

1月21日の日本海寒鱈まつりは、好天に恵まれたこともあり、各会場が大勢の人でにぎわったようです。鶴岡会場で私が参加した露店も大盛況で、作っては配るという作業に明け暮れた一日でした。作るのが追いつかず、20分ほど待たせてしまったこともありました。アブラワタが大きくて脂ののりがいい雌だけを使った私たちの寒ダラ汁は好評でした。ありがとうございました。

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店専務・手塚太一)
2007年2月2日付紙面掲載

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