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庄内浜でも揚がる毛ガニ

読者から「庄内浜でも毛ガニが捕れるそうですね。北海道でしか揚がらないと思っていました。本当ですか。庄内の毛ガニはおいしいのでしょうか。どこで買えますか」という質問をいただきました。

結論から言うと、庄内浜でも水揚げがあります。9月から翌年の6月まで、底引き網船(トロール船)が操業していますが、毛ガニはこの期間なら毎日、捕れる可能性があります。しかし、北海道のように、毛ガニ漁専門の漁船もないし、毛ガニ漁という漁法が行われているのでもありません。底引き網漁でほかの魚と一緒にかかることがあるのです。

余談ですが、ズワイガニは9月から翌年4月までが漁期と決められています。「カニびき」と言われる、トロール船で漁が行われる時があります。毛ガニ、ズワイガニとも、海がないで出漁した場合でも、必ず捕れるとは限らないのです。

庄内浜には毛ガニはそう多く生息しているわけではありません。大きさもまちまちですが、大きいものだと1kgというのもあります。しかし、大半は200~500gの小型のカニです。一般的にカニは大きい方がおいしいと言っていいかもしれませんが、甲羅をさわって軟らかいものは避けてください。脱皮後、間もないという証拠で、身入りが悪いのです。小ぶりであっても甲羅が硬く、ずっしりと重いものを選ぶようにしましょう。カニの重さは慣れないと分からないかもしれません。同じぐらいのものを持ってみて比較してください。

毛ガニは冬というイメージがあるかと思いますが、旬は4、5、6月の春と言われています。一方、ズワイガニの旬は冬です。庄内浜で揚がった毛ガニはどこで買えるかという質問に対する答えですが、最寄りのスーパーやなじみの鮮魚専門店に行き、「毛ガニが入ったら連絡をください」と頼んでみてください。いつも捕れるというものではありませんから、連絡を待つしかないでしょう。

毛ガニは北海道というイメージがついた理由を調べてみました。今でこそ北海道の高価なおみやげの代名詞ですが、有名になって皆さんが好んで食べるようになったのはそう古いことではありません。食糧がなかった第二次大戦中、長万部駅の構内でゆでたての毛ガニを販売していたそうです。それが大評判になって一般に知られるようになりました。昭和30年代までは、産地で毛ガニを一度ゆでてから乾燥させたものを畑の肥料にしていたという話が本に載っていました。産地では、この乾燥毛ガニを毎日、おやつ代わりに食べていた、という浜の高齢者も少なくないそうです。

以下はカニについてのうんちくです。以前お話ししましたが、ズワイガニの雄を山陰地方では松葉ガニと呼んでいます。越前ガニは雄のズワイの福井での呼び名です。雌のカニは庄内ではメガニと呼んでいます。石川県では雌のズワイは「香箱(こうばこ)」と呼ばれ、かなり珍重されているようです。呼び名からも大事にされていることが伝わってきますね。福井では雌ガニを「勢子(せいこ)」というのだそうです。

北海道では甲羅の硬い毛ガニを堅ガニ、脱皮したてのものを若ガニと呼ぶのだそうです。タラバガニも店頭でよく見かけるカニですが、生も冷凍物もほとんどがロシア産で旬は春です。この辺で好まれるワタリガニは、「秋男春女」と言われます。秋は雄、春は雌がおいしいという意味です。

今は、庄内浜の毛ガニ、ズワイガニを店頭で求めるのは難しいと思います。底引き網漁の大半がタラ漁だからです。ズワイも毛ガニもタラの"ほとぼり"が冷めるころに出てくると思います。ただし、タラの季節が終わったからと言って毎日、水揚げがあるとは限らないということを覚えておいてください。

庄内浜でも毛ガニは揚がります。小ぶりのものが多いですが、とてもおいしいです

毛ガニをゆでて食べる場合、残ったお湯はみそ汁にしてください。とてもいいだしが出ます。うまく取り出せなくて食べきれなかったカニみそは、汁に溶かしてください。しみったれた食べ方と思われるかもしれませんが、せっかくの毛ガニです。余すところなく味わおうではありませんか。

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店専務・手塚太一)
2007年2月12日付紙面掲載

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