今の時期は、帰省した人に地元のおいしい食材を食べてほしいと思う人が多いせいか、魚の需要が高まり、値段も上がります。懐かしい顔が集まり、親族も含めただんらんの時ですから、亡くなった人を思い出すような食べ物や懐かしい料理を召し上がるのもいいのではないでしょうか。
今は、夏野菜がたくさん出回っています。その代表格がナスだと思います。素揚げや焼きナスもいいですが、イナダの小さいもの、つまりアオコと一緒にしょうゆで煮付けにしてみてください。私も子どものころ、よく食べたものです。帰省した方にとっては懐かしい味ではないでしょうか。アオコとナスの煮付けはほんの一例です。各家庭にこのような「懐かしの味」があると思います。
宮城県内で今、いいイワシが揚がっています。イワシはかつて、サンマと並んで大衆魚の代表格でした。年配の方には「昔、母ちゃんが作ってくれたイワシのみそ汁がうまかったなあ」という人がいるのではないでしょうか。私もよく食べましたが、イワシのみそ汁はいいだしが出ておいしいです。ただし、みそ汁にするなら、刺し身にできるぐらい、鮮度がいいものでないといけません。生臭みが出るからです。頭とはらわたを取り除き、ぶつ切りというか筒切りにしてみそ汁にします。イワシは塩ふり焼きにもしますが、かば焼きも郷愁を誘うのではないでしょうか。お盆の時期に食べ物でご先祖や亡くなった方をしのぶ、ということもあっていい。私はそう思います。
庄内浜の状況についてお話しましょう。このところ、目立って水揚げが増えているのが小型のサワラです。1㎏ぐらいのサワラをサゴチと呼びます。元々は南方の魚で、庄内にはなじみが薄いため、市場では安い値段で取り引きされます。庄内の人にもぜひ食べるようになってほしいと思います。サワラは漢字で「鰆」と書きます。たぶん皆さんは春が旬と思っているでしょう。春の大型のサワラは刺し身にしたり、表面をあぶってタタキのようにして食べます。今の時期は小型なので、刺し身には向かないようです。でも脂は乗り始めていますから、西京漬けなどつけ焼きや、ブリのように照り焼きにするのがおいしいと思います。
種類は限られているとはいえ、今は夏の魚がまだまだ満載の庄内浜です。9月になると田んぼでは新米が刈り取りとなりますが、海では底引き網漁も再開されますから、旬の魚も揚がります。楽しみにお待ちください。
(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店専務・手塚太一)
2007年8月14日付紙面掲載