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地域情報化の未来像を探る 地域情報化フォーラム

情報社会における地方の目指すビジネス展開(1)

多摩大学情報社会学研究所所長・公文俊平氏
講演する公文氏の写真

私は「地域情報化」という問題には非常に関心があるんですが、その専門家というわけではありません。この問題を専門にやっているのは2人目の講師である評論家の丸田一さんですし、地域情報化の最先端でいろいろなビジネスをやっているのは3人目の講師の田澤由利さんです。私はその前座を務めるというつもりで概括的な話をしてみたいと思います。

今日の話をするためにいろんな資料を見ていたら、一つ興味深い記事を見つけました。今から3カ月前、8月に新潟県南魚沼市で「地域活性化合宿」なるものが行われていました。この合宿は東京の企画会社と、魚沼市のNPO法人の共催でした。今、苦難の時代を迎えている新潟の中でもとりわけ衰退が著しいといわれている南魚沼をどうしようかという問題意識を持って合宿を試みたわけです。

魚沼地域は全国平均より少し落ちますが、インターネット、ブロードバンドの普及率は50%近くあります。まず、この試みについてブログで呼びかけると、きっと多くの方の注意を引いて賛成してくれるだろうと主催者たちは考えた。ところが、全く反応がなかったのです。それでどうしたものかと考えて、最後はファクスを使って、いろいろなところに宣伝をして、集まることは集まったのです。しかし、合宿を開いてみても、ほとんど何一つ問題らしきものは出てこない。結局、「南魚沼には問題がないことが最大の問題である」という結論を出しました。

確かに、ひところの湯沢のようなバブル現象はなくなった、雪も豪雪があるかと思えば一向に降らなくてスキー客も減っている、しかし、コシヒカリはあって売れている。地酒も立派な酒がたくさんある。収入もそこそこある。暮らしも落ち着いて豊かである。「何が問題なんだ」と、こういうことです。2日間開催した結果、結局「地域の活性化」について何一つ提言することができないまま、合宿は終わってしまったそうです。

鶴岡はたぶん、魚沼よりはもっと恵まれた環境にあるわけですから、「さらに問題がない」という言い方もできなくはないだろうと思います。しかし、中長期的に考えるといろいろな問題があることは間違いない。そこで、少し大きく地域の変化の流れを見ていきたいと思いますが、そのために三つのキーワードを準備してみました。「第二次産業革命」「第三次産業革命」「第一次情報革命」です。こういう三つの社会変化が同時並行で進んでいる。世の中の事物というのは、最初はゆっくり出てくる「出現」、それから勢いがついて伸びてくる「突破」、そして行き過ぎてバブルになって訂正が行われる「成熟」、そして「定着」、「衰退」という形で変化していくものが多いのです。そういう目で見ますと、第二次産業革命は、今から150年ほど前に石油エネルギーや電力を使って、重化学工業という形で「出現」してきました。それから20世紀前半に自動車とか家電、つまり消費者が使う機械という形で「突破」をしました。そして20世紀の後半はアメリカが先頭に立ってサービス産業が主導する「成熟」の局面に入っていった。それが今、「定着」局面に入っている。こういうことなんです。

これに対して、第三次産業革命は、今から50-60年前の20世紀後半から、コンピューター産業が引っ張る形で「出現」してきました。そしてこれからいよいよ「突破」の局面に入ろうとしているんですね。コンピューターに続く次の大きな産業が出てくることは間違いないだろうと思われますが、それがどんな産業であるのかはまだはっきりしていません。よく分からない。しかし、何か出てくることは間違いない。これからそういう大きなブレークスルーがあるぞ、というその入り口に立っているわけです。

そして、情報革命の方は、第三次産業革命とだいたい同じ時期、20世紀後半から起こったもう一つの社会変化ですが、産業革命に匹敵するような別の変化。産業化ではない別の種類の社会変化です。どういう変化かというと、人々が知識や情報を扱う能力が非常に増えてきて、積極的にコミュニケーションをするようになる。それから「智のゲーム」と私は呼んでいますが、お金もうけの「富のゲーム」に対して、むしろ評判や名声を競うゲームをプレーするようになる。この情報革命もまた、これからいよいよ「突破」の局面に入ろうとしている、こうした三つの流れがあります。

>> 「情報社会における地方の目指すビジネス展開」(2)

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公文 俊平 (くもん・しゅんぺい)
わが国の情報社会学会の創設者。経済企画庁客員研究官、東京大教養学部教授、国際大グローバル・コミュニケーション・センター所長、代表など歴任し、現在は多摩大情報社会学研究所所長。
>> 多摩大情報社会学研究所
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