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医療最前線 こんにちは元気だのー 癌と生活習慣病を中心に

大腸がんと大腸ポリープ

須賀 俊博 (山形県立日本海病院内科・消化器科医師)

須賀俊博医師

近年の大腸内視鏡機器の発達と治療手技の著しい進歩により、大腸がんや大腸ポリープの治療が大きく変わって来ております。今回は大腸がんと大腸ポリープを取り上げました。

(1)大腸がん

最近、日本人においては、大腸がんの増加が著しく、大きな問題となっています。年間の患者数が、1990年には6万人だったものが1999年には9万人を超え、胃がんをもうすぐ超えるとの予測もあります。

大腸の早期がんでは、ほとんど症状がありません。進んでくると、症状としては、血便、便秘、腹痛、便が細くなるなどがあります。血便は、重大な異常ですが、痔と思って、見逃すことも多い症状です。もし先述の症状があれば精査が必要ですので、お近くの先生に相談してみてください。

(2)大腸ポリープ

大腸にできる隆起性の病気を、一般に大腸ポリープと言います。原因は、炎症性や腫瘍性のものがありますが、約8割は腫瘍性のものと言われています。そのまま放置するとすこしずつ大きくなり、がん化するものもあります。大きさが2cm以上になると、その半数はがん化しているといわれておりますので、早期の治療が必要です。

(3)検診が大事

大腸がんは、早期であればほとんどが完治します。早期発見が重要ですが、症状が出にくいので大腸がんのスクリーニング・検診が必要です。その代表は、便潜血反応で簡単にうけられる検査です。陽性がすぐ大腸がんというものではありませんが、大腸がん手術症例の約30%近くが便潜血陽性だったとの報告もあり、40歳を過ぎたら検診を受けることをお勧めします。

(4)治療法は

大腸がんの治療は、その大きさやがんの深さにより、内視鏡的切除と外科的手術があります。粘膜に限局するがんはリンパ節などへの転移が極めて少ないとされており、内視鏡的治療の適応となります。粘膜下層より深く浸潤するとリンパ節転移の可能性があるため、外科的手術の対象となります。最近、当院も含めて腹腔鏡手術という傷口の小さい手術も盛んに行われるようになってきました。

(5)特に内視鏡的治療について

ポリープや小さな早期がんは、その下の粘膜下層に生理食塩水などを注入して盛り上げ、スネアと呼ばれる針金の輪を投げ縄の要領で盛り上がった根元に引っ掛けて、電気を流して切除します。これは、内視鏡的粘膜切除術(EMR)と呼ばれています。当院では、切除後の出血防止に極小さなクリップで傷口を縫っていますので、大きなポリープや穿孔・出血の危険が大きい場合を除いてほとんどの方が入院せずに外来で治療されています。

内視鏡的粘膜切除術の発達で、早期大腸がんや大腸ポリープの方々の多くの方々が低侵襲な内視鏡的治療で治癒するため、外科的手術まで至らず福音を得ております。しかし、平坦で幅の広いがんやポリープはこのような方法では切除が困難でした。

(6)内視鏡的粘膜下剥離術(ESD)

最近の話題として、このような平坦で大きな病変に対し内視鏡的粘膜下剥離術(ESD)という方法が開発されました。これは、病変の粘膜下層に薬液を注入して持ち上げ、病変の周囲を電気メスで切開し粘膜下層も電気メスで剥離して、根こそぎ切除してしまう方法です。当院では、この内視鏡的粘膜下剥離術に関して全国でも先駆的に導入し、多くの患者さんを治療しております。従来は外科手術でしか切除できなかった方々も、2~3日の入院でおなかを切らず治療できるようになりました。このような画期的方法ですが、従来の方法に比べて出血や穿孔の危険が高いのが欠点です。そのため当院ではより安全に治療できるよう新しい処置具の開発にも力をいれており、当院の出血や穿孔などの偶発症の少なさは日本国内でもトップクラスです。

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繰り返しますが、早期大腸がんや大腸ポリープの段階で病気を発見し、低侵襲に治したいと考え私たちは日々努力をしております。進んでしまうと大きな手術が必要となったり、治療が困難となることもあります。便潜血反応の検診や、さらに精密な大腸内視鏡検査を、ぜひ定期的に受けることをお勧めいたします。

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