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医療最前線 こんにちは元気だのー 癌と生活習慣病を中心に

肺がんの診断と内科的治療

斎藤 弘 (山形県立日本海病院内科医長)

斎藤弘(県立日本海病院内科医長)

「精密検査が必要です」と医師から言われ、Aさんはしつこい咳とともに不安をのみ込んだ。仕事日程を確認しながら平静を装い、レントゲンCT検査の同意書にサインした。しばらく仕事で忙しく、ストレスでタバコの本数が増えた。咳はタバコが増えたせいかも…。咳のためか胸が痛い、最近は背中まで重苦しい…。

会社のレントゲン検診で再検査と通知が来て急に不安になった。しかし仕事が忙しいことと、怖くてなかなか受診する気になれなかった。咳は増え、今朝は痰に血が混じった。まさか…。意を決して病院へ、さっき撮影したレントゲン写真をみながら医師はさらに言った。「痰の検査もしましょう」。

数日後病院を訪れ、CTを撮った。薬(造影剤)を点滴して検査するので食事を抜くよう言われていた。CT検査が終わった後、軽い食事を終えたところで診察の時間となった。診察室に入り、あいさつの後、医師が1時間前に撮影したCT写真を示しながら言った。肺に異常な影があること、リンパ腺が腫れていること、先日検査した痰に異型細胞を認めたこと。異型細胞? がんなんですか? との問いに、がんの可能性があるかもしれません、と。気を取り直し、話を追った。「影の正体を突き止めるために気管支内視鏡検査が必要です。それから血液と尿の検査、脳の断層撮影、全身の骨の検査です。今日のように通院で検査できますが、検査のたびに通院するのが大変でしたら検査入院を勧めます」。

入院? 急に入院といわれても仕事もあるし、通院で検査を受けたいが…。再び検査の日程を決めて病院を後にした。がんの可能性? 入院が必要? 気が動転してしまい、あとはよく覚えていない…。

がんはがん細胞の証明を持って確定診断となります。そのため同時に肺結核等の感染症ついても喀痰をとり検査します。また気管支内視鏡検査で直接異常影より少量の組織を採取し、がんの種類を検討します。平行して病期(進行程度)を調べます。頭部の断層撮影 (脳MRIまたはCT検査)、胸部、腹部の断層撮影 (CT検査)、全身骨シンチグラフィーを行い、がんの広がり (リンパ節、脳、肝臓、骨などへの転移の有無)を検討します。さらに日常生活の健康度を評価します。肺活量、心臓機能、他の病気の有無や、現在治療中の病気があれば治療状況は良好か、などです。より良い治療が行えるよう内科医、外科医、放射線科医等で検討します。手術治療で治癒が望めない、手術に耐えられないと総合的に判断された場合、抗がん剤や放射線治療を検討します。

抗がん剤、放射線治療でも大切なのは治療を継続できる根気と体力が備わっているか否かです。治療目的はがんにより日常生活が障害されず、従来の生活が維持できることです。がんによる諸症状や、抗がん剤の副作用を鎮痛剤、制吐剤、ステロイド剤、モルヒネ等で抑えることが治療の基本です。治療でがんを縮小できれば手術による治療も再検討します。初回抗がん剤治療は入院で行い、1回に3、4週間必要です。副作用を検討し、問題なければ2回目は通院で行い、病状やレントゲン検査で治療効果を評価します。効果があれば抗がん剤治療の継続をすすめます。各人の予定や人生の目標、ライフスタイル等に応じてその後の治療を再度計画します。がんとうまく付き合っていく(根性ではなく根気)ことが大切です。

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