文字サイズ変更



  • プリント用表示
  • 通常画面表示

医療最前線 こんにちは元気だのー 癌と生活習慣病を中心に

生活習慣病と腎障害

出川 紀行 (山形県立日本海病院 内科医長)

出川紀行(山形県立日本海病院 内科医長)

生活習慣病にはさまざまな病気がありますが、最近、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)という概念が注目されています。わが国における診断基準は、おへその高さの腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上の場合、次の3つの症状のうち2つ以上該当した時、メタボリック症候群と診断されます。

  1. 血圧が上130mmHg以上、下85mmHg以上のいずれかまたは両方
  2. 空腹時血糖が110mg/dl以上、
  3. 中性脂肪150mg/dl以上、HDLコレステロール40mg/dl未満のいずれかまたは両方

この診断目的は過栄養による心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中など)予防のためであり、一見腎臓病には関係ないように思われますが、大いに関連があることを以下に述べたいと思います。

まず、最近の研究調査で、メタボリックシンドロームの人はメタボリックシンドロームのない人に比べて、2倍の相対危険度で慢性腎臓病を発症していることが分かってきました。この慢性腎臓病が進行すると末期腎不全に至り、透析を受ける必要がでてきます。

わが国において透析患者さんは平成17年度末には、約25万人となっており、透析患者さんの原因となる病気の第1位は糖尿病(約40%)、第2位は糸球体腎炎(約30%)、第3位は腎硬化症=高血圧、高脂血症などが原因で腎臓が硬化する病気の総称=(10%)です。この糖尿病、腎硬化症で約半数を占め、いずれも生活習慣で引き起こる病気です。つまり生活習慣病の悪化で腎障害をきたし、透析にいたることがわかります。生活習慣病を治療することが、慢性腎臓病の治療になるといっても過言ではありません。では、メタボリックシンドロームが、どのように腎臓を悪化させ、どのように治療をするのか以下に述べたいと思います。

  1. 肥満は心拍出量や循環血液量の増加をもたらし、腎自体の高血圧や腎血流量の増加を招きます。腎臓に負担がかかり、タンパク尿や腎機能低下を認めるようになります。運動、食事療法で肥満を解消することで腎臓を守ります。
  2. 血圧コントロールに関しては、いまさら申し上げるまでもなく、腎臓病を進行させる一番の危険因子であり、降圧剤で血圧を130/80mmHg以下に下げることが望ましいといわれています。
  3. 空腹時血糖上昇だけは、腎臓病の進展をもたらすことはありませんが、空腹時血糖上昇から、境界型糖尿病、さらに糖尿病へ進展し、糖尿病はそれ自体で腎障害をきたすことが知られています。治療は、なによりも血糖を正常化させることが、大切です。運動、食事療法が基本で、糖尿病になれば、さらに血糖降下薬の服用、積極的なインスリン注射の導入で、血糖コントロールし、糖尿病性腎症の発現をおさえる必要があります。
  4. 脂質代謝異常は、全身の動脈硬化を進展させるため、腎硬化症をも引き起こします。これが、慢性腎臓病となり、腎機能を低下させます。高中性脂肪、低HDLコレステロールでも、慢性腎臓病の進展をもたらすので、運動、食事療法に加えて、脂質改善薬による治療も必要になってきます。

いずれにしてもこれらの生活習慣病を改善し、メタボリック症候群なる概念から脱することが、腎障害を回避し、腎臓を守ることができます。

トップページへ前のページへもどる
ページの先頭へ

Loading news. please wait...

株式会社 荘内日報社   本社:〒997-0035 山形県鶴岡市馬場町8-29  (私書箱専用〒997-8691) TEL 0235-22-1480
System construction by S-Field