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こんにちは元気だのー 医療:最近の話題

疼痛の緩和ケアについて

水落 宏太 (県立日本海病院外科医長)

水落宏太氏の写真

がん患者のほとんどに痛み・疼痛(とうつう)はあり、疼痛症状の緩和・軽減は重要な課題です。このような患者さんのために、従来痛みの緩和療法を中心に行っていたのがホスピスです。ホスピスというとどんなイメージをみなさんお持ちでしょうか? 「一度入院したら死ぬまで退院できない」「治療はなにもしてくれない」「あとは死を待つだけのところ」といったようなイメージが強いと思われます。

しかし、これは間違ったイメージです。ホスピスに入るということは、もう何も治療ができないことではありません。現在緩和医療は、抗がん剤による治療などと並行して行われるようになってきておりますし、緩和医療を早い時期から行うことにより、疼痛で苦しむ時間が少なくなっています。

また、最近ではホスピスだけではなく、さまざまな病院で疼痛管理は積極的に行われるようになってきました。当院でもホスピスといった専門的な病棟はありませんが、緩和ケアチームの指導のもと、薬物療法を中心にさまざまな疼痛管理を行っています。できるだけホスピスに対しての誤解をなくして、疼痛緩和治療を受けていただきたいと思います。

一般にがん患者の疼痛緩和にはモルヒネが飲み薬として使用されます。モルヒネは麻薬の一種です。麻薬というとどうしても暗いイメージがつきまといます。さきほどのホスピスと同じようなイメージで、「麻薬を使い始めたからもう助からない」とか、「強くて怖い薬だから使わないでもらいたい」などと誤解される方が多いようです。しかし、病院で処方する麻薬は量を増やしても重篤な副作用は滅多にありませんし、有効に活用することにより痛みを軽減できます。日本海病院で飲み薬として処方している麻薬を具体的にあげますと、リン酸コデイン・MSツワイスロン・塩酸モルヒネ錠・オキシコンチン錠などがありますし、また、デュロテップパッチという張る麻薬の薬もあります。これらを有効に使い疼痛管理を行っています。

これらの薬は、使用するタイミングや量を適切に守ることにより痛みに対して効果を発揮します。麻薬を処方されたときは、時間と量をきちんと守り服用することが大事です。「麻薬って怖いから飲まなかった」と言われる方もいますが、そうなると医師もどのくらいの量を処方していいかわかりません。何かわからないことや不安なときには、主治医とよく話をして、納得してから麻薬を使用していただきたいと思います。

一方、麻薬を決められた通りに服用しても痛みが出てくることがあります。その場合には痛いときに飲む麻薬もあります。「あんまりたくさん飲むと体に悪そうだから痛いのを我慢した」と言われる方もいますが、痛みを我慢してもいいことはありません。どのように痛いのかは本人しかわからないので、ぜひ、医師・看護師に、いつ痛いのか、どのくらい痛いのかなど、遠慮せずしっかり伝えていただきたいと思います。また、麻薬以外の疼痛管理の方法としては、神経ブロックや痛覚を遮断する方法、放射線をかけて骨の痛みなどを取る方法などもあります。痛みに対する治療法は進歩し考え方も大きく変わってきておりますので、正確な知識を持つことが必要です。

最近になってがん患者の疼痛管理に対する関心・理解が深まってきました。昨年はNHKで長時間にわたる特集もあり、視聴された方も多いと思います。また市民講座なども至る所で開催されています。前述しましたが、痛みは他人には伝わりません。もし、ご自身だけで痛みに苦しんでいらっしゃる方がいましたら、ぜひ、医師に相談していただければと思います。なお、日本海病院では地域医療室が疼痛緩和のご相談をお受けしております。

2007年9月25日 up

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