2024年(令和6年) 4月27日(土)付紙面より
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遊佐町沖、酒田市沖で進む洋上風力発電の事業化に向けて国土交通省は26日、酒田市の酒田港を港湾法に基づく「海洋再生可能エネルギー発電等拠点港湾(基地港湾)」に指定し、酒田港港湾管理者の吉村美栄子県知事に「指定書」を交付した。国交省はこれまで基地港湾として全国の5港を指定しており今回、酒田港とともに、青森港(青森市)が加わった。
洋上風力発電事業化へ 大浜西埠頭を整備活用
地元から期待の声 往時の勢いある酒田に 極めて大きな波及効果
この日は国交省東北地方整備局の安部賢副局長が県庁を訪問し、吉村知事に斉藤鉄夫大臣名の指定書を手渡した。
吉村知事は「今か今かと待ち望んでいた。国交省直轄の岸壁整備と連携を図り、県として埠頭用地整備に取り組む。酒田港の利用拡大、改良基礎工事における地元企業の受注機会の拡大、風車維持管理などの新たな産業の拠点化、雇用創出や交流人口拡大など波及効果が期待される。自然環境や歴史景観に配慮しながら再生可能エネルギーの導入を進めていきたい」と。安部副局長は「指定に向けた地域の皆さんの思いが国に伝わった。洋上風力の関連産業が栄え、県の経済に貢献していくことを期待する」と述べた。
基地港湾指定に関して庄内開発協議会最高顧問を務める新田嘉一平田牧場グループ会長は「港を中心に栄えてきたのが酒田。基地港湾になれば、さらに予算が付くと思う。大型クルーズ船の寄港も相次ぎ、北前船が往来していた往時の勢いある酒田に変わる感じがする」と話した。
矢口明子酒田市長は「これまで県と共に基地港湾の指定について国へ要望してきたところであり、これまでの取り組みが評価されたものと受け止めている。本年度から国による整備が始まるが、遊佐町沖をはじめ洋上風力発電の導入が見込まれる海域において基地港湾として酒田港が活用され、洋上風力発電の導入が促進されることに期待」、加藤聡酒田商工会議所会頭は「長きにわたって要望を続けてきた念願が叶い、大変うれしい。地域経済にとって建設・物流業界を中心に極めて大きな波及効果があると受け止めている。これから大きく躍進する酒田港を追い風に、庄内地域が洋上風力発電事業で活性化することを期待する」とそれぞれコメントした。
2024年(令和6年) 4月27日(土)付紙面より
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山口県萩市の「萩焼」をつくる名工たちの逸品を集めた「萩名工選抜展~人間国宝から中堅作家まで~」が鶴岡市末広町のマリカ東館の庄内産業振興センターで開かれている。同じ萩焼ながら釉薬の使い方、焼成の方法で色合いが変わり、伝統を継承した作品や革新的な品も並び来場者の目を楽しませている。
400年以上の歴史を持つ萩焼は土の柔らかな風合いが特徴で、浸透性や保水性に優れる。焼成による土と釉薬の伸縮率差で生まれる表面の貫入(細かなひび)から水分が浸透し、使い込むほど色合いが変化し、素朴ながら独特の深い味わいとなる。近年は釉薬や焼成技術の進歩に加えデザイン性も高まっており、茶道具のほか日常的な食器なども作られている。
展示会は萩市の公信堂熊谷美術(熊谷隆代表)の主催。著名な作家の作品を多くの人に鑑賞してもらい、美術工芸品を身近に感じてもらうため全国各地で萩焼の展示会を開催している。
今回は茶道具や花器を中心に100点余りを展示。会期中の入れ替えもあり累計で120点以上の展示数になるという。人間国宝の11代三輪休雪(壽雪)氏(1910~2012年)をはじめ、革新的な造形に挑む12、13代休雪氏、「萩伊羅保」というジャンルを確立した野坂康起氏、康起氏の息子で黒彩の作品を数多く手掛ける和左氏、青萩を完成させた納富晋氏など約20人の作品が並んだ。
このうち11代休雪氏の作品「白萩割高台茶碗」や「白萩耳付水指」は、厚く掛かった白の釉薬が目を引く。荒い土灰を用いた手法で「鬼萩」と呼ばれ、ごつごつとしたつくりの中に野性的な美を感じる。対照的に11代休雪氏の孫に当たる三輪華子さんの作品「萩 日の出」は洗練されたフォルムと早朝の空のような色合いで「姫萩」と呼ばれる。
このほか野坂和左さんの作品は黒彩で仕上げた椀やぐい呑みなどで、萩焼の伝統を残しながらも独特のデザインを追求した革新的な作風がそろっている。
展示は29日(月)まで。時間は午前10時から午後5時(最終日のみ午後4時まで)。入場無料。
期間中、加賀蒔絵の名匠・吉田華正さんの作品展も同時開催している。