2021年(令和3年) 10月6日(水)付紙面より
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第205回臨時国会が4日に召集され、衆参両院での指名選挙で自民党の岸田文雄総裁(64)が第100代内閣総理大臣に選出された。同日夕の皇居での首相任命式と閣僚の認証式を経て、公明党との連立による「岸田内閣」が誕生した。新政権は新型コロナウイルス対策を最重要課題とし、日本経済の立て直しと所得分配を重視する「新しい資本主義」の実現に取り組む。岸田首相は臨時国会会期末の14日に衆院を解散し、衆院選について19日公示、31日投開票とする日程を表明した。
岸田首相は4日夜、就任後初の記者会見で新型コロナウイルス対策について「コロナとの闘いは続いており最優先、喫緊の課題。納得感を持っていただくため国民に対し丁寧に説明する」と述べた。また、経済対策について「目指すのは新しい資本主義の実現。新しい経済、社会のビジョンを示していきたい。多様性が尊重される社会を目指していく」と述べた。
岸田内閣誕生に際し、連立与党の自民党県連の森谷仙一郎幹事長は「岸田総理の『聞く力』をいかんなく発揮し、まずはコロナ対策でしっかりした成果を挙げ、国民の安心感を強めてほしい」、公明党県本部の菊池文昭代表は「老壮青のバランスと安定感に重きを置いた組閣と感じる。岸田内閣の手腕に期待したい」とそれぞれコメントを発表した。
野党側では立憲民主党県連の石黒覚代表が「一日も早い解散総選挙を言い出したのは、議論に応じると不都合が出ることを避ける考えだ」、国民民主党県連の青柳安展会長が「コロナ対策や経済再生について国民の声を聞く政治をお願いしたいが、人を変えただけで期待できない」、共産党県委員会の本間和也委員長が「岸田内閣は安倍・菅直系政治であり、自民政治の中での政権交代で日本の政治は良くならない」とそれぞれコメントを発表した。
また、吉村美栄子知事(70)は「コロナ対策や産業・経済の回復など山積する諸課題に対し、スピード感を持って全力で対処して頂くことを期待する」とコメントを発表した。
庄内経済界など期待の声
これまで歴代総理と懇談し、地域課題の解決に向けてさまざまな要望活動を繰り広げている、庄内開発協議会最高顧問で平田牧場グループ(酒田市)の新田嘉一会長は、外務大臣当時の岸田文雄新首相と名刺を交わしている。当時を振り返り「人をひきつける、魅力ある人柄という印象」と話し、「『人の話をよく聞いてくれる総理』との声も聞こえてくる。港湾、高速道、空港といったインフラ整備には国の力が不可欠。新首相に頑張ってもらうとともに、庄内地域に住む人が心を一つにして頑張っていかなければいけない」と続けた。
丸山至酒田市長(67)は「内閣のメンバーは変わっても大きな柱は変わらない。新たなメンバーが新たな施策を講じると思う。新型コロナや産業振興、デジタル改革、少子化など地域課題が山積する中、この地域の発展にとっても役立つ政策の展開に期待したい」と話した。
経済立て直しを打ち出した岸田内閣の発足に、加藤捷男鶴岡商工会議所会頭は「大規模な追加経済対策を期待している。厳しい状況が続く飲食・観光・交通事業者への支援はもとより、部材や半導体の供給制約、働き手不足、物流停滞による業況悪化への対策を早急に講じてほしい。コロナとの共存の中で経済を再開する戦略を描き、デジタル化を含め新たな地方創生の道筋を示されるよう希望する」、弦巻伸酒田商工会議所会頭は「コロナ禍により多大なダメージを受けた中小企業者に対し、地域の声に耳を傾け誠実に向き合い、早急な経済対策を進めることを期待する。ワクチン接種とともに感染防止対策を強化しながら、デジタル化の推進などをはじめ消費喚起への対策を実行されるよう強く希望する」とそれぞれコメントした。
岸田文雄氏
広島県出身、銀行員、衆院議員秘書を経て1993年7月に衆院議員に初当選。外相のほか党国対委員長、党政調会長などを歴任。党派閥の宏池会(岸田派)所属。同派閥の議員が首相に就くのは91年の宮沢喜一氏以来30年ぶり。衆院広島1区選出、当選9回。
2021年(令和3年) 10月6日(水)付紙面より
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準絶滅危惧種のタニシを使った循環型農業「タニシ米プロジェクト」を進めている山形大学農学部の佐藤智准教授と学生は、鶴岡市中山の農家・佐藤好明さん(60)の協力を得て水稲を栽培しているが、予想よりもタニシが増えていることが分かった。今年6月下旬に田植えをしたはえぬき(タニシ米)は順調に成長。佐藤准教授は「田植えした時期から比べてタニシは10倍以上増えた。やはり中山地区の環境と無農薬効果が大きい。収穫した『タニシ米』はネット販売して消費者の反応を見たい」と話している。
佐藤准教授と学生が山大農学部の実験田でタニシを使った稲の生育状況を調べたところ、タニシがいる田んぼの方が稲の生育を促し、収量が約10%向上することを突き止めた。山大生が研究していることを知った佐藤さんが全面協力することになり、手始めに1アールの水田で「タニシ米」の無農薬栽培を始めた。
タニシの種類は国内に生息する「マルタニシ」を使用。田植えと同時に約100匹放したが、現在は10倍以上の1000匹を超えるまでになった。今年生まれた子どものタニシが多くを占めた。
佐藤准教授によると、田んぼでタニシは土を取り込みながらフンを出して有機肥料の役割を果たす。タニシがいる田んぼはミジンコや藻類が増え、それを食べる昆虫が集まりだすという。
来週中にも稲を刈り約2週間、天日干しにする。その後、1キロ1000円でネット販売する予定。関係者で「タニシ米」の試食も行う。
協力農家の佐藤さんは「田植え自体が遅れたため収量は取れないが、1年目にしては上出来。わりと粒も大きい。来年が楽しみ」と話す。
佐藤准教授は「タニシが増えたことだけでも一つの成果。田んぼにはトンボがいるし、イモリも戻ってきた。循環型農業を確立するために来年はインドネシアの留学生が研究している『ミズアブ』のフンなどを肥料にして、タニシ米がどのように育つか次のステップに進みたい」と語った。
来年は面積を倍以上に広げて栽培する予定だ。