2021年(令和3年) 4月2日(金)付紙面より
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鶴岡市のバイオベンチャー・スパイバー(関山和秀代表執行役)が、初の海外生産拠点としてタイに建設していた構造タンパク質素材「ブリュード・プロテイン」の大規模な量産工場が完成し、3月29日に現地で開所式を行った。試運転を経て年内に商業生産をスタートし、より効率的で環境負荷の低い生産技術の開発にも取り組む。開所式で関山代表執行役は「このマザープラントを拠点にタイ政府ともしっかりと手を取り合い、持続可能な社会の実現のための地球規模のインフラづくりに、グループ一丸となって全力で取り組んでいく」と述べた。
子会社のスパイバー・タイランド(森田啓介代表取締役)が、タイの首都・バンコクの東南、ラヨン県にあるイースタンシーボード工業団地内に約10ヘクタールの敷地を確保し、製造棟とオフィス棟を整備した。製造棟は鉄筋コンクリート造り3階建てで、微生物を発酵、精製して各種製品の原料となる構造タンパク質を生産する。鶴岡市のサイエンスパーク内にある本社パイロットプラントの約100倍の規模となる年間最大数百トンの量産を計画。粉末の状態で日本に運び、鶴岡の本社施設で繊維などに加工する。タイ工場の従業員は約40人で、このうち本社からの出向は約15人。
微生物の発酵には養分となる糖が必要。タイはサトウキビなど糖の原料が豊富にあり、初の海外生産拠点を同国に整備していた。開所式には日本、タイ両国政府の関係者も含めて約50人が出席。テープカットなどを行い、森田代表取締役が「この工場の完成は、これから始まるタンパク質素材時代の幕開けを意味する。セラミック、鉄、プラスチックに続く新たな基幹素材として、タンパク質が人類社会の発展に貢献できるように努力する」とあいさつ。関山代表執行役はオンラインで参加した。
スパイバーが生産する構造タンパク質は、繊維をはじめ樹脂、フィルム、ゲル状など多様な素材への加工が可能で、石油など化石資源に依存せず環境負荷の低い、持続可能な次世代基幹素材として注目されている。国内外の多分野の企業や研究機関と共同研究開発を進めている。昨年10月には、穀物メジャーの米国ADM社と協業契約を結び、米国へも生産拠点を拡大することを発表している。スパイバーは「タンパク質素材の需要増加に伴い、世界各地での製造拠点の増設が見込まれ、タイの工場をモデルにした他工場への技術移転も視野に入れている。一日も早くブリュード・プロテイン素材や製品を届けられるよう製品・技術開発を進め、事業基盤の構築に努める」としている。
2021年(令和3年) 4月2日(金)付紙面より
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鶴岡市の第三セクターとして運営してきた「くしびき温泉ゆ?Town」(三千刈)、「長沼温泉ぽっぽの湯」(長沼)の2つの入浴施設が1日、それぞれ地域住民が中心となった非営利の運営組織に移行し、再スタートを切った。新たにフレイル(虚弱体質)予防の健康教室を開くなど、市の財政負担を減らしながら利用拡大を図っていく。
ゆ?Townはくしびきふるさと振興公社、ぽっぽの湯はふじの里振興の各第三セクターが運営してきたが、ともに慢性的な赤字から脱却するため経営を見直す。指定管理方式は維持しながらも、利用料金制から委託料制に切り替え、利用料は市の歳入に繰り入れる。食堂は運営から切り離し、他の事業者が市と直接契約する。市の櫛引、藤島各庁舎が全面的に運営を支援する。両施設とも入浴の営業時間や料金は従来と同じ。
ゆ?Townの運営組織は「くしびき温泉ゆ?Town管理運営組合」(組合長・難波正喜櫛引芸術文化協会長、組合員15人)。従業員8人は引き継ぐ。昨年4月から新型コロナの影響で営業を休止している食堂は現在、業者を選定中で、早ければ5月の大型連休ごろにも再開する。5月13日から毎週木曜日に「フレイル体操教室・リズム体操」(参加費100円)など、多彩な健康事業で新たな利用者の獲得を目指すという。
ぽっぽの湯の運営組織は「長沼温泉ぽっぽの湯運営協議会」(会長・大沼富美雄・前長沼温泉振興会長、会員14人)。従業員9人はそのまま引き継ぐ。食堂は4月1日から地域住民有志の会による「ぽっぽ食堂」に移行し、当面はラーメン1種から徐々にメニューを増やす。産直は運営協議会が、生産者組織との関係をそのまま引き継ぐ。ゆ?Townと同様に、健康増進や体力づくり事業も立ち上げていくという。
移行初日となった1日、ゆ?Townではオープンに先立ち、難波組合長が従業員に辞令を交付し、「お客さまに喜んでもらい、地域になくてはならない施設になるよう頑張ろう」と訓示。午前9時のオープンとともに「いらっしゃいませ」と気持ちも新たに客を迎えた。