文字サイズ変更



  • プリント用表示
  • 通常画面表示

荘内日報ニュース


日付の新しい記事へページを移動する日付の古い記事へ
  • ニューストップ
  • 最新記事
  • 戻る

2023年(令和5年) 10月21日(土)付紙面より

ツイート

加茂の風力発電事業が白紙に

 鶴岡市加茂の山地で風力発電を計画していた東京の事業者が「野鳥などの生態系への影響が懸念される」として、事業の断念を市に伝えた。建設予定地に近接して「ラムサール条約」登録湿地の大山上池・下池があり、毎年飛来する鳥類の生態系を事業者が尊重した。

 計画には環境保全からの反対と、活性化のため導入すべしとする意見が分かれた。市は事業者に中止を申し入れていた。山地への風力発電導入では以前、羽黒地域の計画が撤回されている。また先頃、青森県八甲田山系でも、地元や自治体の反対で白紙になった。導入が進む洋上風力発電と異なり、山地への導入には難しい課題が多いということだろうか。

◇      ◇

 加茂地区では最大8基の風車建設が計画された。断念の理由に事業者は「1年間現地調査した結果、予定地上空で多くの鳥類の飛来が確認された」ことなどを挙げた。皆川治市長は「自然や歴史文化環境の保全と、再生可能エネルギー導入はともに重要。調和ある両立に取り組みたい」とコメントした。エネルギー事情を考えれば再エネ導入は避けられず、今後は立地禁止エリアを設定する「ゾーニング」を急がねばならないのではないか。

 この問題では生態系を守る団体が1万筆を超える反対署名を集め、加茂地区の住民は地域の活性化のため建設促進を求めた。市が事業者に中止申し入れをすると、地元はその撤回を市議会に請願、市議会もこれを採択している。反対の活動をした団体と建設促進を求めた住民。どちらも自然の恩恵を受けて、人の生活も成り立つという意識に立ってのことではないか。

 日本自然保護協会は先頃、再エネを進める上で、生物多様性に重要な地域は避けるべきだ、との見解を出している。2018年以降公表された環境影響評価(アセスメント)をした地点の多くに、水源確保や土砂災害防止のため伐採などが規制されている保安林が含まれているという。青森県八甲田山系への導入断念も、特に水源への影響が心配されたためだ。

◇      ◇

 政府は40年度までに原発30~45基相当の3000~4500万キロワットの再エネ導入を目指し、その主力は風力発電。異常気象は「地球が病んでいる」ことを意味し、その原因は人間の営みがもたらしたものだ。ならば、回復させるのも人間の力と言える。

 陸地でも洋上でも、風力発電建設は自然界に異質な構築物を造ることになる。しかし、再生エネの導入が避けられない以上、生態系を守る事は当然として、新しい景観として受け入れる寛容性も求められる。そのためには立地禁止エリアの設定を急ぐ必要がある。風力発電導入には賛否が伴うとしても、どこかで折り合いを付けながら前に進まなければ、人の将来はより厳しい環境に置かれることになるのではないか。

画像(JPEG)



日付の新しい記事へページを移動する日付の古い記事へ

記事の検索

■ 発行月による検索
年  月 

※年・月を指定し移動ボタンをクリックしてください。
※2005年4月分より検索可能です。

 
■ キーワードによる検索
   

※お探しのキーワードを入力し「検索」ボタンをクリックしてください。
※複数のキーワードを指定する場合は半角スペースを空けてください。

  • ニューストップ
  • 最新記事
  • 戻る
ページの先頭へ

Loading news. please wait...

株式会社 荘内日報社   本社:〒997-0035 山形県鶴岡市馬場町8-29  (私書箱専用〒997-8691) TEL 0235-22-1480
System construction by S-Field