2024年(令和6年) 12月28日(土)付紙面より
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県産米などを食べて育ったニワトリ「やまがた最上どり」を生産しているアイオイ(鮭川村、五十嵐忠一社長)は25日、鶴岡市覚岸寺の鶴岡メタボロームキャンパスで記者会見し、新商品の「最上どり鶏節」「鶏節パウダー」を発表した。同市の慶應義塾大先端生命科学研究所や県工業技術センター庄内試験場(三川町)との共同研究を経て完成した商品。五十嵐社長は「タンパク質が不足しがちな現代人、高齢者などに自信をもってお勧めできる」と話している。
鶏節、パウダーとも庄内地域産業振興センター(鶴岡市末広町、理事長・皆川治市長)のバイオクラスター形成促進事業による支援を受け、2022年度から3カ年かけて開発した。
会見で五十嵐社長はアイオイについて「食用鶏肉の生産、加工、販売に取り組んでいる。ブロイラーを扱う養鶏場としては全国で初めて農場HACCP認証を取得しており、衛生管理を徹底している。最上どりの飼料は50%以上が県産米と宮城産米で、食の安心・安全にもこだわっている」と紹介した。
共同研究者で慶應先端研の小倉立己特任助教がメタボローム解析を用いて最上どり(ムネ肉)の成分分析を行った結果について「プロテインにも匹敵する高タンパクで機能性成分が含まれている。既製品や競合品と比較すると、肉の甘さに関わる成分が高く、低脂肪で手軽にタンパク質を摂取できる」と述べた。また、優れた特徴として魚の削り節と比較するとアレルギーの原因となるヒスチジンがほぼ含まれていないことも分かった。
また、庄内試験場の菅原哲也さんは鶏節の熟成期間について「試行錯誤を重ねたところ、細菌など微生物変動の観点から60時間(2日半)が最適。熟成期間中はうま味成分のアミノ酸が増加傾向にあった。また、乾燥処理の過程でムネ肉の水分が5%以下になるとパウダーとして最適の状態になった」と解説した。このほか、環境変化により魚介類の水揚げ量が減少傾向にある現状で、鶏肉をベースにした最上どりは資源の確保が容易という。
会見後、鶏節やパウダーを使った食品の試食会が行われた。パンハウス庄内(鶴岡市播磨)は鶏節パウダーを生地に練り込んだロールパンを、酒田米菓(酒田市両羽町)はパウダーを表面に吹き付けたオランダせんべいをそれぞれ用意。参加者たちは「通常の製品と比べると総菜パンのような、肉っぽい味がしておいしい」「鶏節の容器のふたを上げると漂ってくる香りが強い」などと感想を交わしていた。
アイオイの五十嵐社長は「鶏節でだしを取ったみそ汁やパウダーを混ぜた飲食物で高齢者もタンパク質を摂取しやすくなる。来春をめどに商品化を検討しており、まずは直営店などでの販売を目指す。コストを計算しながら価格を決定したい」と話すとともに「最上どりは庄内米も食べている。最上どりの鶏節やパウダーを、庄内を含め県内一円で広めたい」と述べた。