文字サイズ変更



  • プリント用表示
  • 通常画面表示

荘内日報ニュース


日付の新しい記事へページを移動する日付の古い記事へ
  • ニューストップ
  • 最新記事
  • 戻る

2024年(令和6年) 1月1日(月)付紙面より

ツイート

あけましておめでとうございます

新年のごあいさつ
「致道館」風土を醸成
荘内日報社社長  橋本 政之

 本紙に「思郷通信」を連載している佐高信さんが昨秋、『佐高信評伝選』全7巻(旬報社)を上梓した。第5巻「歴史の勝者と敗者1司馬遼太郎と藤沢周平2西郷隆盛伝説」を開くと、「藤沢の郷里の新聞『荘内日報』~」などと弊紙を登場させていただき感謝に堪えない。
 「司馬遼太郎と藤沢周平」から読み進めた。

 藤沢は『周平独言』(中公文庫)所収の「三人の予見者」というエッセイで、同郷の清河八郎、石原莞爾、大川周明の類似性を語っている。
 この三人の出生地は山形県の庄内平野~
   〈中略〉
 私は藤沢文学を愛する。また、「信長ぎらい」というエッセイで、叡山の焼き討ちをはじめとする信長の行った殺戮(さつりく)を指弾した藤沢に大きな拍手を送る。
 それゆえに、同郷ということで石原に甘くなった藤沢に疑問を感じざるをえないのである。

 藤沢文学と司馬史観は対極にある、という視座からの疑問だ。
 『周平独言』を開く。三人の同郷人の生き方について、藤沢さんは「さほど好感は持てないのだが~」とし、「カリスマ性」「卓抜した予見能力」という類似性を説く。
 さらに「三者ともに日本の激動期にかかわりあい、そこに壮大な理想を追いもとめて中途に挫折するのは、ひとに先立って物が見える、鋭すぎる頭脳のせいだったかも知れない」とトップには立てなかった共通点も挙げる。この共通点を現代にみると、四半世紀ほど前に生粋の庄内人だった「総理に一番近い男」が思い浮かぶ。「~の乱」で挫折した。
 藤沢さんはそうした類似性や共通点に自身の「権威、権力を白い眼でみる悪癖」を重ね、「風土と人間の性格は容易に切りはなせないものらしい」とする。
 昨年11月、第20回全国藩校サミットが、日本の近代教育発祥の地・湯島聖堂のある東京都文京区で開かれた。2007年に第6回サミットを鶴岡市で開いた庄内藩校・致道館関係では旧庄内藩主酒井家第18代当主、酒井忠久さん(77)、致道館文化振興会議の役員・会員が参加した。
 文京大会会長の徳川宗家第19代当主、徳川家広さん(58)は主催者あいさつで「世界で争いがある中で、日本が先進国の中で最も恵まれているのは江戸時代後期の藩校教育の賜物。藩校は今の日本のバックボーン・背骨になっている。藩校の実績の検証が未来へつながる第一歩」と語り、今の日本の風土の底流に藩校教育があると説いた。
 藩校は江戸時代から明治初期にかけて全国に約280校あった。東北では米沢藩の興譲館、会津藩の日新館など約30校あったが時代の変遷の中でほとんど姿を消した。庄内藩の致道館は「東北で唯一現存する藩校建造物」として国指定史跡になっている。
 致道館教育を検証する活動の一つに慶應義塾大学教養研究センターの「庄内セミナー」がある。学生たちが合宿しながら致道館教育や庄内の風土について地元識者から学び、出羽三山の山伏修行なども体験する。昨夏の第12回セミナーの報告書で同センター所長の片山杜秀法学部教授は、戊辰戦争で敗北し西郷隆盛に共感する人々がいた庄内で、その後に石原莞爾、大川周明が現れたことについて「日本の1945年の破局はこのふたりによって根幹のストーリーが語れてしまうし、ふたりが現れたのには庄内の歴史と風土がどうしても絡む」と説く。
 庄内の風土について『南洲翁遺訓』に序文のある佐賀生まれの明治の政治家、副島種臣は「沈潜(ちんせん)の風(ふう)」と評した。致道博物館初代館長など酒井家の相談役だった犬塚又太郎氏は「まことに至当なご意見」とし、「じっと耐え忍んで沈潜する、しかしこれは已(や)むに已まれず勃発することがあるでしょうし、またあるいは反骨精神となって現れるでありましょう」(「閑鷗犬塚又太郎先生遺稿集」の「庄内人の風格について」より)と説いている。
 今年4月、藩校名を冠した県立致道館中学・致道館高校が開校する。今月6日にある中学入試(定員99人)の志願倍率は2・21倍。県教委は中高一貫校・致道館の基本理念の骨格を「自主自立」「新しい価値の創造」「社会的使命の遂行」とする。藩校・致道館の特色は「天性重視・個性伸長」「自学自習」「会業の重視」。学制は今の小学校にあたる「句読所(くとうしょ)」から最上級の「舎生(しゃせい)」は大学・大学院にあたり小中高大の一貫教育とも言える。
 庄内唯一の四年制私立大学の東北公益文科大学は「舎生」にあたる。18歳人口の減少が地方の小規模私大の経営に影響する懸念がある中で、県は「公立化」について具体的な検討作業を進めている。
 同大は今春、昨年夏に新設した「起レ業(ぎょうをおこす)研究所」の「起業マインド育成プログラム」をスタートさせる。機能強化策の一つで、新田嘉一理事長(90)は「地域の未来を支えてくれる人材育成に結び付いてほしい」と期待し、「(公立化は)この大学の正念場。地域の大学を残せる地域が生き残れるし、残せない地域は衰退する。心を一つにして取り組んでいただきたい」と繰り返し語る。

 新年明けましておめでとうございます。日ごろ「荘内日報」をご愛読、ご利用いただき誠にありがとうございます。「荘内日報」は、「庄内はひとつ」を創刊の理念に1946年1月14日、前身の「荘内自由新聞」の週刊発行に始まり、「時代をつなぎ、地域をつなぎ、心をつなぐ」を郷土紙の使命としています。本年も変わらぬご愛顧をお願い申し上げます。

あけましておめでとうございます
あけましておめでとうございます



日付の新しい記事へページを移動する日付の古い記事へ

記事の検索

■ 発行月による検索
年  月 

※年・月を指定し移動ボタンをクリックしてください。
※2005年4月分より検索可能です。

 
■ キーワードによる検索
   

※お探しのキーワードを入力し「検索」ボタンをクリックしてください。
※複数のキーワードを指定する場合は半角スペースを空けてください。

  • ニューストップ
  • 最新記事
  • 戻る
ページの先頭へ

Loading news. please wait...

株式会社 荘内日報社   本社:〒997-0035 山形県鶴岡市馬場町8-29  (私書箱専用〒997-8691) TEL 0235-22-1480
System construction by S-Field