2024年(令和6年) 2月20日(火)付紙面より
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新田嘉一平田牧場グループ会長(90)=酒田市楢橋、市名誉市民=が収集した美術コレクション「新田嘉一コレクション」のうち、国内外の大家の日本画を紹介する「新田嘉一コレクション展―日本画の名品を中心に」が18日、市美術館(石川好館長)で開幕。高い審美眼でえりすぐった計16点が並び、新田会長は「より多くの市民に見てもらいたい」と話している。
2022年夏に開催した「珠玉のフランス絵画を中心に」、昨年冬の「陶芸逸品展」に続く市美術館におけるコレクション展の第3弾となった今回のテーマは「日本画」。現代まで系統が続く「円山派」の祖であり、写生を重視した名品を残す円山応挙(1733―95年)、狩野派を代表する探幽(1602―74年)、文化勲章受章者で近代日本画の巨匠・横山大観(1868―1958年)、同じく文化勲章を受けた前田青邨(1885―1977年)らとともに、中国河南省出身で「現代人物画の最高峰の一人」と称された黄冑氏(1925―97年)の作品が並ぶ。
応挙の「韓愈雪行図」は6曲1双の屏風(びょうぶ)。落款印譜から天明7(1786)年、55歳の作品とみられ、国宝「雪松図」(三井記念美術館所蔵)に並ぶ円熟期の作品で、海外流出の恐れがあったことから新田会長は急きょ買い求めた。「国宝であってもおかしくない、日本にあってこその作品と思った」と入手当時を振り返る。松も山もほとんど輪郭線が用いられず、淡墨で暗い部分を書き込むことでものの形を表している。
会場となった常設展示室2で初日午後に開幕式が行われ、来館者ら約50人が出席。石川館長は円山派や狩野派の系統について解説した後、「新田会長からは物心両面で市美術館を支えてもらっている。共にこの美術館を発展させたい」とあいさつ。矢口明子市長と佐藤猛市議会議長の祝辞に続いて新田会長は、新田家に代々伝わる探幽の真筆「寿老人」に触れ、「幼少の頃からこの絵を見て育ったこともあり、画家になりたいと思ったこともあった。持っている作品を見てもらうことはありがたい。多くの市民、特に若い人から『本物の美』に触れてもらいたい」と述べた。
市民ギャラリーでは、新田嘉一コレクションのうち森田茂画伯の大作など洋画13点を展示している。期間は3月10日(日)まで。