2025年(令和7年) 5月7日(水)付紙面より
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東北公益文科大学の2025年度の学部入学者が294人(編入7人を含む)で、開学以来最多となった。全国的に地方の私立大学で定員割れが続く中、社会情勢の多様化から、「公益学」に対する理解が深まっているためであろう。まずもって定員超えを喜びたい。この先も他に誇る事ができる大学にしたい。その役目を担うのは学生ではないだろうか。
公益大は26年4月の公立化・機能強化に向けた準備が進んでいる。学生は地元や県内、東北地方だけでなく関東・甲信越、九州地方など全国各地から集まった。開学から四半世紀を迎えようとしており、着実に知名度が高まってきた証しであろう。
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24年度は入学者が定員割れした私立大学が全国で約6割に達したという。先頃、京都ノートルダム女子大学(京都市)を運営する学校法人が、26年度以降の学生募集を停止すると発表した。学生が在籍する間は教育を続け、29年3月で閉学するという。少子化によって、大都市の大学でも学生確保が難しくなっている現実の一端の中での、公益大の健闘ぶりである。
公益大の公立化は長年の懸案だった。しかし、それだけで経営環境が改善するとは限らない。大学の特色ある教育内容によって学生を引き付けなければならない。公益大は13年度の「地(知)の拠点整備事業」を皮切りに、大学教育再生戦略推進費「大学教育再生加速プログラム」、学長のリーダーシップで大学の特色ある研究で全学的な独自色を打ち出す「私立大学研究ブランディング事業」、組織を挙げて改革に取り組む私立大学を重点的に支援する「私立大学等改革総合支援事業」と、相次いで文部科学省の採択・選定を受け、公益学ならではの魅力ある大学づくりに取り組んできた。
大学進学では依然として中央志向がある中で、中央への進学が厳しい受験生もいる。地方から大学が減れば、そうした受験生が影響を受ける。公益大は文科省の採択でさまざまな教育を取り入れていることを最大限活用し、教育内容の質向上と学生確保、経営健全化につなげていきたい。
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文科省は私立大の経営安定に向け、経営改善を目指す学校法人を指導し、学部新設の審査基準も厳格にするという。経営が悪化傾向にある法人は、状況が改善しなければ募集停止、法人解散の判断を促すとされる。その点、公益大は文科省の採択でさまざまな教育を取り入れながら、定員を確保していることは評価されるのでないか。
25年度入学式で、新田嘉一理事長は「公益大の魅力と評価が高まっている。大学の学びを通じて何にでも挑戦してほしい。失敗しても社会はみなさんを応援してくれる」と新入生を励ました。新田理事長の言葉を借りれば、学生一人一人の挑戦の成果が、この先の公益大のさらなる基礎を固めていくことになる。