2025年(令和7年) 05月24日(土)付紙面より
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「オランダせんべい」の酒田米菓(酒田市両羽町、佐藤栄司社長)などは、文化庁「100年フード」に認定された「酒田のラーメン」調理過程で出る廃棄煮干しを再利用した「オランダせんべい酒田のラーメン風味」を開発、販売を開始した。2023年5月に発売し大人気商品となっている「にぼせん」に続く第2弾。庄内地域の観光物産施設で扱っており早速、手に取る人が相次いでいる。
「酒田のラーメン」は、煮干しを用いた出汁(だし)が特徴の一つ。以前は出汁を取った後の煮干しは廃棄するしかなく、「酒田のラーメンを考える会」(斎藤直会長)によると、加盟する市内12店舗で月に計約500キロを捨てていたという。SDGsの観点からこれを活用し、新たな付加価値を付け販売する「アップサイクル」につなげようと、「酒田のラーメンexpo実行委員会」(同市、小田かほる委員長)が中心となり、▽市麺類食堂組合▽さかたの塩―など多くの企業の協力で「オランダせんべい煮干し塩味『にぼせん』」を開発・発売した。
今回のラーメン風味はスープをイメージし、せんべい生地に粉末状にした煮干しを練り込み、甘さ、こしょうなどを表面にシーズニング。食品添加物不使用で、食べた瞬間にさっぱりした魚介出汁の風味が広がり、「酒田のラーメン」を連想させるという。
今月19日にオランダせんべいFACTORYで開催された発表会には、酒田米菓のマスコットキャラクター「オランダちゃん」も出席。同社の小野賢人ゼネラルマネージャー(GM)は「多くの企業と協力し試行錯誤を重ね、1年半ほどかけて開発した。酒田のラーメンが好きな人、観光のお土産など多くの人に手に取ってもらえたら」と。さかたの塩の大川義雄社長は「出汁を生地に練り込んでいるところがポイント。酒田を象徴するお土産でSDGsに貢献できれば」と話した。
小野GMによると、初回生産分6200袋で約40キロの廃棄予定煮干しを使用したという。ラーメン風味は1袋40グラム227円(税込み)。酒田米菓の直営店、同市のいろは蔵パーク内夢の倶楽、鶴岡市の庄内観光物産館などで扱っている。
酒田米菓ではオランダせんべいの「にぼせん」や「酒田のラーメン風味」取り扱い店を随時受け付けている。希望・問い合わせは同社営業部=電0234(22)9541=へ。
2025年(令和7年) 05月24日(土)付紙面より
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英国開催の世界最高峰のワインコンペティション「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)2025」の審査結果が20日に発表され、鶴岡市のピノ・コッリーナ ファーム&ガーデンワイナリー松ケ岡の白ワイン「鶴岡甲州2023」が最高賞のゴールドメダル(金賞)を受賞した。今回、日本ワインの金賞は6銘柄だけで、同ワイナリーは初の受賞となった。
IWCは毎年4月にロンドンで開催され、「世界で最も大きな影響力を持つ」とされるワインコンペ。2週間にわたり3段階の審査が行われる。エルサンワイナリー松ケ岡(早坂剛社長)の同ワイナリーは、「鶴岡甲州」の20年物から出品を続け、昨年は22年物が上から3番目のブロンズメダルを受けた。今回出品した23年物は「エレガントな味わい」と高く評価され、最高賞に選ばれた。
鶴岡甲州は250年以上のブドウ栽培の歴史がある同市の西荒屋地区の樹齢60年以上の古木の甲州ブドウのみを使ったワイン。ほとんど品種改良されていない原種に近いブドウで、豊かな香りが特徴。23年産ブドウは猛暑の影響で酸が抑えられたものの、かんきつ系のフルーティーな余韻が長く感じられるワインに仕上がり、審査でも「香り」が高評価を得た。
同社の川島旭ジェネラルマネージャー(54)は「庄内の土壌や海と山からの風、大切な水、そして庄内藩からの歴史と文化が育んだ甲州ブドウは鶴岡・庄内の宝。世界で最も影響力を持つIWCで鶴岡甲州が最高賞を受賞できたのは、庄内の皆さんが作り上げてきた甲州ブドウのおかげ」と話した。9月9日にロンドンでメダル授与式が行われる。ゴールドメダル受賞の「鶴岡甲州2023」(750ミリリットル)は3850円(税込み)で販売。問い合わせはワイナリー松ケ岡=電0235(26)7807=へ。
2025年(令和7年) 05月24日(土)付紙面より
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相次ぐクマの目撃で、県はクマ出没注意報を出した。山菜採りなどで山に入る機会も増える。鈴やラジオを鳴らして気をつけなければならない。問題は市街地でも目撃されるようになり、鶴岡市では鶴岡公園近くで目撃されたクマを、猟友会が駆除した。
クマが人間の生活圏に“堂々”と入り込むようになった。個体数が増え、世代交代を重ねる間に人間を怖がらなくなっている、本来のクマの生息域の森と人の生活圏の境界となる里山が荒廃している―など、生態や環境の変化が出没増加につながっているとの指摘もある。早朝や夜間はクマに出合う可能性が高い時間帯と言われる。
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鶴岡市では16日、朝から市街地南部の日枝、海老島で目撃され、午後4時半過ぎに家中新町の空き地のやぶの茂みにいた体長約1メートルのクマが駆除された。18、19日には別のクマがほなみ町、東原町で目撃された。市の中心部までクマが入り込んでいることに、日常生活に細心の注意を払いたい。
鶴岡市に寄せられた4月18日から今月19日までのクマ出没情報は32件。国道を横切っていた、道路周辺で草を食べていた、やぶや松林に入って行った、山に向かった足跡があった―など、学校やコミュニティセンター近くという、人の居住地に接近している場所で目撃されている。
全国的にクマの個体が増加していて、環境省などによれば2023年の人的被害は全国で198件。このうち秋田県(62件)と岩手県(46件)に被害が集中している。同省の専門家検討会は基本的な対策として「クマの地域個体群を維持しつつ、人の生活圏への出没を防止して人とクマのすみ分けを図る」との方針という。自治体は捕獲したクマ対策として、唐辛子スプレーをかけたり、人間の怖さを教えて山奥に放す「学習放獣」をしている。再び人里近くにやってこないように仕向けているというものの、「すみわけを図る」という対策にも限界があるのではないか。
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人口減少や高齢化などで林業や畑仕事が衰退し、人里と森の境界の「里山」も荒れてクマの生息域が人の生活圏周辺まで拡大してきているとされる。クマも世代交代を重ねて人を怖がらなくなってきたとの指摘は、今後も予想される。
市街地への出没を防ぐには、畑地などで果実や農作物を取り残さない、住宅地で生ごみ等を放置しないなどが呼び掛けられている。クマはやぶなどに身を隠しながら移動することから、やぶの刈払いや下草刈りも肝要だ。以前、秋田県庁にクマの駆除に対する抗議や苦情が相次いだが、人の生活圏で被害が増えているのは深刻だ。環境省は人の生活圏との「すみ分け」を図る、「共存」策を図るということになるが、ある程度駆除による個体の管理も要るのではないだろうか。クマ対策に知恵を集めたい。