2020年(令和2年) 12月10日(木)付紙面より
ツイート
新型コロナウイルス感染症に関して県内初の院内クラスター(感染者集団)が発生した酒田市浜松町の山容病院の支援に向け、同市は院内に留まっていた同病院医療スタッフら職員のため滞在先を用意、運用を開始した。一方、市は8日、地元JAと連携し同病院はじめ医療機関に対して「応援の花」を寄贈することにした。
院内クラスターの発生を受けて市は今月4日、県庄内保健所や酒田地区医師会などと共に感染対策本部を設置し、感染拡大の防止、患者の治療支援に当たっている。
同居家族への感染を防ぐため、医療スタッフらはこれまで病院内に留まっていたという。PCR検査で陰性と確認されたスタッフの滞在先として市は7日から宿泊ができる市の公共施設を提供、同日は2人が利用したという。職員の同居家族受け入れに向け翌8日には民間の宿泊施設を一部借り上げた。
一方、「応援の花」贈呈は、コロナ禍による需要減に際して市、市民から買い支えしてもらったことに感謝しようと、JAそでうら(同市坂野辺新田、五十嵐良弥代表理事組合長)が8日、市に対して「お礼の花かご」を贈ったことがきっかけとなった。
同市は花卉(き)販売額が県内2位の一大産地でアルストロメリア、トルコギキョウ、ユリといった花々を通年で生産、主として大規模都市圏に流通している。コロナ禍で今春以降、卒業式や入学式、婚礼といった、多くの花が使用される各種式典の中止・規模縮小で需要が減退した。
打開策として市は今年3月以降、庁舎内で切り花の対面・注文販売を行った他、本庁舎、各支所を酒田の花で彩っている。結婚・出産という人生の節目を迎えた市民に対し、市内で生産された四季折々の花を贈呈する「『花のまち酒田』の花いっぱいプロジェクト」も展開した。
この日はJAそでうらの五十嵐組合長、佐藤弘行花卉部会長らがラナンキュラスや葉ボタン、ストックなどで彩られた「お礼の花かご」を手にして市庁舎を訪問、丸山至市長と矢口明子副市長に手渡した。
懇談で、丸山市長は「こういう時だからこそ、あらためて花の持つ素晴らしさに気付く。頂いたものとともに、市で地元の花を購入し、応援の意を込め山容病院はじめ市内の医療機関に贈呈したい」と提案。五十嵐組合長は「われわれも大変な思いを経験し市、市民からかなり力になってもらった。応援できるのであれば、ぜひ力になりたい」と快諾した。
市は、そでうら、庄内みどり両JAから地元産花卉を購入、応援メッセージを添えて贈呈する予定。
2020年(令和2年) 12月10日(木)付紙面より
ツイート
「大黒様のお歳夜(としや)」の9日、庄内地方の各鮮魚店ではお供え用のハタハタを焼く光景が見られた。
大黒は豊作や豊漁をもたらす神。県内では12月9日を祭礼日とし、大黒様が嫁取りをする日ともされる。庄内では「まめに働けるように」と健康や子孫繁栄を願い、豆ご飯や豆腐の田楽、黒豆を使ったなます、納豆汁、ハタハタの田楽焼き、二又の「まっか大根」を供え、家族そろって拝礼してから食べるのが伝統だ。まっか大根は大黒様の嫁になぞらえ、ハタハタのブリコ(卵)はまめと子孫繁栄の象徴とされる。
鶴岡市本町一丁目の銀座通りで江戸末期から続く「三浦佐五兵衛鮮魚店」ではこの日、店主の三浦弘子さん(80)と、長男で7代目・理さん(50)の2人が午前6時ごろから炭火をおこし、同7時ごろから竹串に刺したハタハタ約150匹を焼く作業に追われた。
理さんは普段は会社勤めだが、この日は母親の手伝い。焼き上がったハタハタを経木に挟んで串から外しながら「お歳夜をする家も減って、注文は10年前の半分ほどに減った」。弘子さんは「炭火で焼く店も減ったが、やはり味が違うので、続けている」と、こんがりと焼けた魚の串をクリと回した。香ばしいにおいに誘われるように、通りを行く車の運転席から「頑張ったがー」と声が掛かり、弘子さんは「頑張ったぞー」と笑顔で応じていた。