2021年(令和3年) 6月5日(土)付紙面より
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鶴岡市の「大山犬祭り」の御鉾餝(おほこかざり)神事が3日、同市大山二丁目の大工町公民館で行われた。昨年は新型コロナの影響でほとんどの儀式を中止したが、今年は規模を縮小しながらも催行するもので、この日は御神体「御鉾様」への拝礼や、頭人(とねり)と仮女房との盃事など、伝統の儀式が厳かに行われた。5日の本祭りは、恒例のくねりは行わないが、神社での神事などは行う。
大山犬祭りは、同市馬町の椙尾神社(宮野直生宮司)の例大祭。昔、同神社の裏山にむじなの化け物がすみつき、村の娘を人身御供に差し出さないと、田畑を荒らしていた。旅の六部が、化け物が恐れていた「丹波の国のめっけ犬」を探して連れ帰り、むじなを退治したという伝説に基づく。上(大泉地区)、下(西郷地区)、大山(元町)の3地域でそれぞれ頭屋(神宿)を立て、本祭りではそれぞれ人身御供になぞらえた「仮女房」(奥方)を中心にした行列を仕立て、同神社まで巡行する。300年以上の歴史があり、酒田市の酒田まつり、鶴岡市の天神祭とともに「庄内三大祭り」に数えられている。
今年の頭屋は、上頭が栄町(小羽祐吉頭主)、下頭が千安京田(齋藤久実頭主)、大山頭が大工町=羽田秀夫頭主(66)。昨年はコロナで頭屋を引き継ぐ還頭祭もできなかったため、一昨年の還頭祭で引き継いだ3頭屋が2年間、御鉾様を守ってきた。祭りの長い歴史の中でも異例という。
御鉾餝は、本祭りに備え、御仮殿(おかりや)の御鉾様や、その依り代である神籬(ひもろぎ)に供物をささげ、拝礼するもの。上頭は6月1日、下頭は同2日、大山頭は同3日に行っている。
3日の大山頭では、椙尾神社の梅本幸巳権禰宜の采配で、羽田頭主らが神籬や御鉾様に拝礼。その後、頭屋の男性が務める「頭人」役の大瀧航平さん(12)=鶴岡五中1年=と、「仮女房」役の百瀬梓紗さん(14)=同3年=らが三々九度の盃を交わす盃事を、厳かに繰り広げた。
羽田頭主は「神様を2年もお守りすることは想定もしていなかった。今年もコロナでどうなるか心配だった。くねりはしないが、神様を来年の頭屋にお渡しできそうなので、ほっとしている。最後までしっかり務めたい」と話した。
5日午後には3頭屋が椙尾神社で祭礼を行う。