2024年(令和6年) 5月8日(水)付紙面より
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庄内町に町立図書館・内藤秀因水彩画記念館がオープンした。最近の図書館は、本を閲覧して借りるだけから、利用者の使い勝手を考えて多様な機能を備えるようになった。両施設は別棟だが廊下でつながっており、図書館に足を運んだ際に、日本を代表する水彩画家の作品に触れることができ、利用者の文化・芸術に対する意識醸成が期待される。
一方、酒田市に新しい「市文化資料館光丘文庫」が18日、オープンする。同市の歴史と文化を集中展示しながら、貴重な歴史資料の散逸を防ぐ目的も持つ。文化は地域に活力をもたらす役目を果たすといわれ、大勢が利用してこそ文化施設が持つ機能が生きることになる。
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新しい町立図書館は楕円(だえん)形をしている。中央の一般図書スペースを囲んで児童図書、キッズスペース、読み聞かせなどができる場所、学習室、軽い食事ができるカフェスペースも設けた。郷土資料コーナーがあるのは、郷土の歴史に関心を持っている人にとってはうれしい。
隣接する内藤秀因水彩画記念館は、新図書館に連結する形で全面的にリニューアルされた。内藤画伯は小学校教員になったが絵を諦められず、東京美術学校(現東京芸大)で学び、トルコ大使館員だった実兄・内藤智秀の元で数カ月間トルコで過ごした後フランスに留学。日本水彩画会理事長、日展審査員などを務めた。旧余目名誉町民になり、没後に全作品約2400点を町に寄贈した。「絵のある図書館」あるいは「本のある美術館」というのも、町の誇りとするところであろう。
一方の酒田市文化資料館光丘文庫。酒田大火の記録など市の歴史資料を収集・保存・展示する施設として開設。光丘文庫は本間家から寄贈された古文書、文化財などを保存・管理してきた。酒田市総合文化センター内の旧中央図書館が移転したことで、空きスペースを活用してオープンする。旧中央図書館の広さは約1450平方メートル。既存の旧市立資料館と光丘文庫のスペースより広く、展示内容の充実が期待される。
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図書館と聞いて浮かぶのは「本を借りる」というアナログ感や、本を高く積んだ書架で館内がやや薄暗いというイメージもあった。しかしここ数年来、イメージを変える図書館が相次いでいるという。カフェがあって、ふと立ち寄ることができる気軽さもある。図書館という文化の雰囲気に触れるだけでもいい。
庄内町立図書館・内藤秀因水彩画記念館も酒田市文化資料館光丘文庫も市街地の中央にあり、人が集まりやすい地理的環境にある。本に触れ、美術を鑑賞し、郷土の歴史を知る。施設を上手に利用して育て、文化の発信拠点にしていくのは、利用者の力。そうすることで地域の活力を生むだけでなく、人づくりの拠点にもなる。