2024年(令和6年) 5月24日(金)付紙面より
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鶴岡商工会議所は、郷土食の提供店の“見える化”や、市街地で郷土食が気軽に食べられる仕組みづくりの構築に向けたテスト事業として、市内の飲食店で笹巻の提供を期間限定で行っている。実施店の反応や消費者のニーズを探りながら、今後の食関連の観光戦略に反映させていくという。
食の観光戦略に反映
鶴岡市が今年、ユネスコ食文化創造都市認定10周年を迎えたことや、今年3月に「庄内の笹巻の製造技術」が国の登録無形民俗文化財に指定されたことを受け、食や食文化を観光コンテンツの一つとしてPRを強化している。しかし、郷土食は家庭で食べられることが多いため、実際に提供している店が少なかったり、どの店で提供しているか分からないといった観光客などの声が聞こえたことから、同商議所でテスト事業を企画。手始めに文化庁の「100年フード」に昨年認定され、鶴岡アートフォーラムで開催中の特別展「和食展」で手作り体験なども行われている「笹巻」を取り上げ、メニューを提供し、SNSなどで情報発信してくれる市街地の会員事業所を募った。
賛同したのは、これまでにも笹巻を提供していたという末広町の「うなぎの若林」、新たに提供する山王町の「すたんど割烹みなぐち」と本町一丁目の「ogawa en cafe」の3店。今月11日から来月9日(日)までの約1カ月間、期間限定でメニューに「笹巻」を加え、提供数や利用者が観光客であるかどうかなどを把握し、フィードバックするという。
このうちogawa en cafeでは朝日地域で作られた笹巻を提供。一般的な黒蜜と青きな粉のほかに、お茶屋らしく抹茶糖で味わう笹巻を提案し、メニューに加えた。21日までの10日間で30食余りが出て、黒蜜と抹茶糖の割合も半々だという。
笹巻は初めて食べたという菅原大輝さん(23)=酒田市こがね町二丁目=は「初めての不思議な食感。祖母にも食べさせたいので、今度一緒に来たい」とおいしそうに味わっていた。
同商議所では「この取り組みを知った会員事業所以外の店舗からも、うちでも笹巻を提供しているという情報も寄せられた。冬には寒ダラ汁の提供も予定している。さまざまなニーズを探りながら、他団体とも連携を取って伝統食を未来につなげたい」と話していた。