2017年(平成29年) 8月1日(火)付紙面より
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水上に組んだ野外ステージで国指定重要無形民俗文化財の黒川能を上演する「水焔(すいえん)の能」が29日夜、鶴岡市櫛引総合運動公園で行われ、県内外から訪れた約500人の観客が幽玄の世界を楽しんだ。
1984年に旧櫛引町誕生30周年記念事業として初めて開催。今年で34回目を迎える。舞台は上下両座が隔年で演じ、今年は上座が演能を担当した。
この日、午後5時の開演時には汗が流れるほどの蒸し暑さだったものの日が沈むにつれて和らぎ、芝生席に並んだ観客たちはビールを飲むなどして能を楽しんでいた。
地元の櫛引東小児童による舞囃子(まいばやし)「高砂」に続いて、今回の演目の能「木曽願書(きそがんしょ)」、狂言「瓜盗人(うりぬすびと)」、能「獅子」の3番が演じられた。このうち「瓜盗人」は瓜を盗みに来た盗人が、畑主が化けたかかしとも知らずに罪人や鬼に見立てて演技を楽しみ懲らしめられる物語。鬼が亡者を地獄へ責め落とすまねを演じる瓜盗人が畑主に一喝される場面では、客席のあちこちから笑いと拍手が湧き起こった。
闇の深まりとともに水上に設けられたかがり火の赤々と燃える炎と舞台を囲む水面が幻想的な雰囲気を演出し、観客たちは水焔の能ならではの雰囲気に浸っていた。