2018年(平成30年) 11月15日(木)付紙面より
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鶴岡市大網の七五三掛(しめかけ)地区で2009年に発生した地滑り災害を受け、農林水産省が行っていた対策事業「庄内あさひ農地保全事業」の完工式が13日、同市朝日中央コミュニティセンターで開かれた。東北農政局や県などの行政関係者、大網地区の自治会、七五三掛集落の元住民ら70人が出席し、完工を祝った。
09年の融雪期に七五三掛地区で地下水を要因とした大規模な地滑りが起き、農地や道路に亀裂や崩壊が生じ、住民の自主避難や営農の全面休止、ライフラインの寸断など甚大な被害が発生した。
同省は発生直後から約8ヘクタールを対象に地下水を除く緊急対策工事を実施。沈静化し12年には全面的な営農が再開されたが、調査で東側区域でも地滑り性の変形が確認された。下流域の庄内平野の農地の取水に甚大な被害が及ぶ危険性があることから範囲を拡大して対策工事を行ってきた。
約240ヘクタールを対象に、9年をかけて排水トンネル工1・6キロ、集水井13カ所、承・排水路工などによる立体排水工の対策工事を行い、総事業費は78億1000万円。
完工式では、東北農政局の鈴木良典局長が「本年度末で管理を県に引き継いでもらうが、円滑な引き継ぎが行われるように取り組んでいる。今後とも美しい棚田地区としてさらなる発展を遂げることを祈念する」と式辞。藤田真吾東北農政局庄内あさひ農地保全事業所長が事業経過報告を行い、庄内あさひ地区国営地すべり対策事業促進協議会長の皆川治鶴岡市長が謝辞を述べた。
七五三掛地区で復旧を見つめてきた注連寺の佐藤弘明住職(58)は「発生から10年。不安を抱えながらで長かった。住み続けることができれば一番良かったが、完工式を迎えたことで一つの区切りが付き、安心感を抱いている」と話した。