2006年(平成18年) 7月21日(金)付紙面より
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鶴岡市小岩川で土砂崩れが発生してから20日で1週間が経過した。不通となっているJR羽越本線は応急の復旧工事が行われているが、開通のめどはたっていない。国道7号も片側交互通行が続く。物流関係への影響もじわり広がり、帰省シーズンを控え、長期化を懸念する声も出ている。
JRによる応急の復旧工事は16日夜に始まった。工事用機械や土砂を搬入出するための仮設道路の整備が現場の北と南、2カ所で進んでおり、一両日中にも完成する。
その後、線路を覆っている土砂の搬出と崩落斜面に残るコンクリート壁の撤去作業を並行して行い、線路防護柵の設置に入るというスケジュールが想定されている。土砂の搬出は、酒田河川国道事務所が進めている国道7号の防護柵完成後になる。線路防護柵の設置範囲などは決まっていない。
羽越線の開通には崩落した斜面の安全が確保されることが前提。斜面の補修工事をどのような形で行うかも未定で、羽越線の開通時期についてJR新潟支社は「できるだけ早い時期に開通できるよう努力しているが、いつになるか見通しは立っていない」とする。
15日に全面通行止めから片側交互通行に切り替わった国道7号でも復旧工事が行われている。酒田河川国道事務所は、国道への土砂の流入を防ぐため、線路と国道の間で、延長80メートルの防護柵を設置する。42本の支柱のうち19日までに16本の設置を終えた。
順調に進めば、数日後には完成するとみられるが、19日夜には崩落斜面の上の部分で、不安定な数個の石が確認され、撤去作業のため24分間、国道7号は通行止めとなった。天候や地盤など不安定な要素を抱えているため、国道の全面開通の時期もはっきりしない。
関西、九州方面に製造した工業薬品などを、工場に隣接するJR羽前水沢駅から輸送している鶴岡市の水澤化学水沢工場では20日から、コンテナを直接積載できるトラックによる輸送を始めた。また、円筒形10トンバルブタンクによる鉄道輸送ができないため、内容物をほかの容器に詰め替えてトラックで輸送しているという。
しかし、同工場では「コンテナを積めるトラックは1台だけで、21日以降のめどは立っていない。ほかの会社でもトラック輸送に切り替える中、長期化するとさらにトラック確保が厳しくなる。できるだけ早く復旧してほしい」と話し、早期復旧が見込めない中、代替輸送の方法に頭を悩ませている。
また、新潟方面に鉄路で製品輸送している鶴岡市のブルボン羽黒工場によると、通常、同工場から新潟工場までJR酒田港駅経由で運んでいる製品をトラック輸送に切り替えて対応している。同工場の物流担当者は「製造関係は問題ないが、一度に運べる量が鉄道貨物より少ないため、長期化するとコスト面に響いてくる。できるだけ早く復旧してほしい」と話している。
一方、夏休みシーズンを前に観光面での影響も少なからず懸念される。鶴岡市内の各温泉地の旅館、ホテルへの影響について庄内観光コンベンション協会では「初期の段階ではキャンセルもあったが、各旅館、ホテルでう回路の案内などを徹底したことで最小限に食い止めた状況」と話す。また、海水浴客への影響については「海水浴客は内陸、仙台方面が多数のため影響は少ないことを期待している」と語っている。
復旧に向けた工事が進められている鶴岡市小岩川の土砂災害現場=20日午前